佐藤 貴久, 近藤 武, 大島 慶太, 篠崎 仁史, 元山 貞子, 皿井 正義, 黒川 洋, 岩瀬 正嗣, 渡邉 佳彦, 菱田 仁
心臓 34(4) 261-269 2002年
反応性充血の評価には,超音波法により上腕動脈の拡張反応を利用したり,前腕のプレチスモグラフィーを用いて検討されることが多いが,これらの方法は再現性が低いことが問題点として指摘されている.そこで,簡便かつ定量的であると考えられる駆血負荷下肢タリウムシンチグラフィを考案し,核医学的反応性充血指標(radioisotopic reactive hyperemiai ndex=RIRHI)を算出した.すなわち,一側の大腿を5分間駆血し,タリウム静注後に駆血を解除し,駆血側と対側下肢との平均カウントの比をRIRHIとした.基礎的検討としてRIRHIと超音波による反応性充血指標(ultrasonic reactive hyperemia index=USRHI)を10症例で比較したところ,RIRHIは駆血解除10秒後のUSRHIと有意(p=0.031)に相関(r=0.678)した.また,RIRHIの検者間での再現性を最近の連続25例で検討したところ,有意(p<0.0001)な高い再現性(r=0.997)を示した.そこで,現在治療中の種々の循環器疾患107例(男78名,女29名,平均年齢64.1±13.0歳)について,RIRHIと冠動脈危険因子との関連を検討した.その結果,単回帰解析ではRIRHIは年齢(r=-0.286,p=0.003),性(r=0.262,p=0.006)のみが有意な相関を示し,ステップワイズ多変量解析でも年齢,性のみが選ばれた.従来から血管内皮機能と関連すると考えられている指標が選ばれたことから,駆血負荷下肢タリウムシンチグラフィから得られたRIRHIは反応性充血を臨床的に評価できる有用な指標と考えられた.