岩田 洋平, 小寺 雅也, 臼田 俊和, 八代 浩, 木村 多美
皮膚科の臨床 45(4) 461-464 2003年4月
54歳男.両手指の腫脹,チアノーゼ,疼痛が出現した.初診時には,手指に限局した皮膚硬化,Raynaud症状,爪郭部出血点,指尖部虫喰い状瘢痕があった.抗核抗体は強陽性であったが,抗topo-I抗体,抗セントロメア抗体,抗RNP抗体,抗SS-A抗体はすべて陰性であった.免疫沈降法を施行したところ,抗Th/To抗体が検出された.以上より,抗Th/To抗体陽性の全身性強皮症と診断した.全身の精査では,軽度肺高血圧症,逆流性食道炎を認めた.軽度肺高血圧症に対してPGI2製剤の内服,逆流性食道炎に対してはクエン酸モサプリド,Raynaud症状と皮膚潰瘍に対してシロスタゾール,ニコチン酸トコフェロール,PGI2製剤を使用し,自覚症状の改善が得られている.現在通院で治療観察中であるが,皮膚硬化及び肺高血圧症は進行していない