岡野 高之, 岩永 迪孝, 與那嶺 裕, 箕山 学, 柿木 裕史, 田原 史子, 田辺 正博
日本耳鼻咽喉科学会会報 107(11) 998-1003 2004年
最近11年間に手術を施行した先天性真珠腫34例35耳(2〜55歳)を対象に,発生部位と進展様式,および病態と臨床像を検討した.対象は,真珠腫の上皮と鼓膜に連続性がないこと,鼓膜に陥凹や穿孔を認めず,上皮の入り込む機会がないこと,を先天性の診断基準とした.全例上皮が嚢状となったclosed型であり,上皮が膜様に存在するopen型は認められなかった.発生部位として,前上象限型と後上象限型に加え,上鼓室型の存在が示唆された.前上象限型,後上象限型の間には真珠腫の局在や進展傾向,臨床症状にも明かな差異があり,先天性真珠腫は単一の発生機序では説明が困難と思われた.手術法はcanal wall up法を31耳,canal wall down法を4耳に施行した.一期的に手術を終えたのは4耳で,他はsecond look operationを含め,なんらかの形で段階的に手術を行い再発への対策とした.術前後で聴力検査が可能で,術後6ヵ月以上観察できた26耳で,22例が成功と判定された