藤田 浩史, 有沢 富康, 中村 正克, 千田 隆夫, 田原 智満, 新田 佳史, 村尾 道人, 水野 環, 原田 雅生, 中村 雅彦, 神谷 芳雄, 長谷川 申, 渡邊 美帆, 岩田 正己, 柴田 知行, 渡邊 真, 高濱 和也, 黒田 誠, 堀口 祐爾, 中野 浩
藤田学園医学会誌 28(2) 147-153 2004年12月
大腸癌合併潰瘍性大腸炎症例の生検組織1例と長期保存標本4例(男2例・女2例)を対象に,軽度炎症粘膜,萎縮粘膜,腫瘍部の腺管単位での遺伝子変異検索を行った.生検組織では,APC遺伝子のExon 11,15の上流,下流領域ともPCR-SSCP法で明らかな変異single strand DNAのバンドは検出できなかった.p53遺伝子に関しては,Exon 5,6では変異バンドは認めなかったが,腫瘍部でExon 7に変異バンドを認め,正常バンドは欠失していた.ABI PRISMによる解析では,mRNAレベルで936番塩基がC→Tへの点突然変異を認め,241番アミノ酸がセリンからフェニルアラニンに変化するミスセンス変異がみられた.長期保存標本は,LCMを用い2000spotsの照射により良好な腺管のくり抜きが可能であった.APC遺伝子のExon11に関しては4例ともPCR-SSCP法により変異バンドは検出されず,p53遺伝子のExon7でも認めなかった.潰瘍性大腸炎からの発癌の機構は,通常の大腸癌と異なることが推測された