齋藤 健太, 岩田 洋平, 有馬 豪, 宮川 紅, 森田 雄介, 沼田 茂樹, 佐野 晶代, 矢上 晶子, 松永 佳世子, 杉浦 一充
西日本皮膚科 79(1) 75-79 2017年2月
壊死性筋膜炎では広範囲デブリードマンが一般的とされているが,入院期間の延長,複数回の植皮術が不可避となる。今回我々は必要最小限のデブリードマンで良好な経過を得ることのできた3症例を経験したため報告する。症例1:73歳,女性。手背の擦過傷を契機に発症。発赤・腫脹・熱感・紫斑が前腕から上腕にかけて急激に拡大し当科へ救急搬送された。壊死の著しい手背のみの切開,抗菌薬投与と補液,尿量測定,バイタル管理で前腕から上腕にかけての紫斑と発赤は改善し最終的には手背部のみの植皮術で治癒した。症例2:39歳,男性。右膝から大腿の広範囲に圧痛を伴った紫斑,壊死を認めた。重度の糖尿病を合併していた。初期治療は局所麻酔下で壊死が著しく膿汁の貯留した部位のみ切開を行い,その後,抗菌薬投与,補液,尿量管理,バイタル管理で炎症反応は軽快した。重度の糖尿病に対して血糖コントロールを行い,入院40日後に全身麻酔下で植皮術を行い治癒した。症例3:73歳,男性。初診2日前より右手背の腫脹を自覚し,急激に右上肢全体に腫脹,発赤が拡大し敗血症性ショックに陥り当科を受診し,手背部のみの切開,抗菌薬投与,補液,尿量測定,バイタル管理にてショック状態から脱し切開部は外用療法のみで治癒した。壊死性筋膜炎のデブリードマンの範囲は患者の全身状態,重症度などを勘案して決定することが重要であり,皮膚所見に精通した皮膚科医は積極的に壊死性筋膜炎の診断や治療に参加すべきと考える。(著者抄録)