冨田 元, 原 肇秀, 岩田 洋平, 岩田 貴子, 小川 文秀, 佐藤 伸一
皮膚科の臨床 53(3) 509-511 2011年
85歳女。初診の約10年前から外陰部の硬結に気づいたが放置していた。約2年前から同部に糜爛が生じ、近医で外用剤治療を受けたが、腫瘤を形成したため紹介となった。陰核包皮上に径8mm大の淡紅色乳頭状腫瘤を認めた。左側に径1cm大の淡紅色局面を形成し、周囲には小陰唇を中心に鶏卵大の一部白色で光沢を有する萎縮性白色局面を認めた。腫瘤の病理組織学的所見では、真皮層に向かって有棘細胞様の細胞からなる腫瘍細胞が浸潤しており、個細胞角化や細胞間橋を認め、一部には角化の強い癌真珠を形成していた。個々の細胞は核の大小不同や分裂像等を呈していた。白色局面の角層は過角化を示し、表皮は萎縮していた。一部に液状変性、真皮乳頭の消失があり、真皮上層にリンパ球が浸潤していた。硬化性萎縮性苔癬(LSA)に合併した有棘細胞癌と診断し、切除術を施行した。以後再発や転移はなかった。外陰部LSAはステロイド外用でそう痒はコントロールされた。