日比将人, 奥村尚威, 加藤充純, 西田純久, 冨重博一, 原普二夫, 橋本俊, 棚橋義直, 杉岡 篤, 松井太衛
日本小児外科学会雑誌 44(2) 118-123 2008年
【目的】肝疾患の病態進行に伴う血小板減少の原因は未だ不明な部分も多い.血小板減少時におけるADAMTS-13の関与を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】2004年6月〜2006年8月までに当院で生体肝移植術を施行した15歳以下の小児14例(男児8例,女児6例)を対象とした.周術期の血小板数,ADAMTS-13活性及びvon Willebrand因子活性を測定し,様々な因子との因果関係を検討した.【結果】生体肝移植後の血小板数は,術後2日目に最低値をとり,術後2週間までに術前値に回復した.術後2日目の血小板数と有意な相関がみられたのは,術前因子では,患者年齢,血小板数,PELDスコア,術中因子ではGRWRであった.血小板数回復率(術後7日/術後2日血小板数)は平均1.27±0.47であり,血液型不適合の3症例は全例が1未満であった.ADAMTS-13活性は7例で測定したが,術前と比べ術後7日目に有意な低下がみられた(123.38±65.81% vs.71.84±23.66%).術後7日目のADAMTS-13活性はプロトロンビン時間と有意に正の相関を示した.血小板数回復率1以上の症例は,1未満の症例と比べ術後7日目のADAMTS-13活性が有意に高かった(93.87±17.94% vs. 55.33±7.50%).血小板数回復率1未満の症例におけるADAMTS-13活性は, vWF活性と負の相関を示し,血小板数とは正の相関を示した.【結論】ADAMTS-13活性は肝移植前には肝疾患の進行度を,肝移植後にはグラフト機能を反映すると思われる.肝移植後のADAMTS-13活性の低下は血小板減少をきたしうる.