前田 耕太郎, 丸田 守人, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次, 松本 昌久, 小出 欣和, 松岡 宏, 岡本 規博, 勝野 秀稔, 中村 悟, 古賀 崇, 石川 太郎, 船橋 益夫, 小石 奏子, 廣田 穣
日本大腸肛門病学会雑誌 57(2) 81-85 2004年2月1日
症例は51歳の女性で,3回の分娩後13年間の腟および子宮の脱出を主訴に来院した.排尿障害および尿失禁,便秘,軟便時のsoilingも認めた.腟および子宮は腟口より約10cm突出し,肛門括約筋は分娩時の会陰裂傷のため前方で約1/4周断裂していた.排便造影ではrectoceleを認めた.腟,子宮,膀胱脱,rectoceleおよび肛門括約筋断裂による括約筋不全の診断で,腟式子宮全摘出術,前腟壁形成術,anterior levatorplasty,肛門括約筋形成術を施行した.術中,肛門近傍まで下垂した腹膜を認めたためperitoneceleと診断し,余剰の腹膜を切除縫縮した.両側附属器の切断部は最深部の腟断端に固定し,腟を通常の位置に戻した後,腟側壁の裏側を深部から5カ所肛門挙筋に固定した.術後経過はほぼ良好で,症状も消失し,術後半年後の現在,腟・子宮・膀胱脱の再発もない.