研究者業績
基本情報
MISC
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日本大腸肛門病会誌 66(10) 982-990 2013年da Vinci Surgical System®を使用したロボット手術の導入後3年半余りが経過し,これまで56例を経験した.ロボット手術の利点である高解像度3次元画像や多関節機能などは骨盤内の解剖を詳細に把握し,繊細な手術を行ううえで有用である.手術時間の延長や自費診療などの課題もあるが,今後本邦においても症例数の増加が推測される.これまでの経験から定型化されつつある直腸癌に対する手術手技を紹介し,43例の短期成績について報告する.また,欧米や韓国からの報告を踏まえて,ロボット手術の現状や今後の展望について述べる.
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日本腹部救急医学会雑誌33 33(1) 31-38 2013年大腸癌穿孔の臨床病理学的特徴について非穿孔例と比較し,その治療方針を検討した。穿孔例(15例)は他臓器浸潤例,高度静脈侵襲(v3)例の割合が非穿孔例に比べて有意に高率で,stageIV症例が多い傾向にあった。穿孔部位は癌部7例,癌口側7例,肛門側1例であった。根治度A手術は9例で施行されたが(一期切除5例,二期切除4例),二期手術では一期切除に比べて手術時間は長く,出血量は多かった。stageIIの1例(25%)とIIIaの3例(100%)で再発を認め,穿孔に伴う腫瘍細胞の散布に関係する腹膜播種や皮下再発を4例に認めたが,根治度B手術後に再発した1例を含む4例で血行性またはリンパ行性の再発を認めた。根治度A症例のうち非再発例の郭清リンパ節数は平均19.8個で再発例の6.3個に比べて多い傾向にあり,全身状態が許す限り,積極的な一期的切除と十分なリンパ節郭清が血行性,リンパ行性再発を予防し,予後改善に寄与することが期待された。
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日本大腸肛門病学会雑誌 66(1) 7-12 2013年進行大腸癌化学療法であるXELOX±BV療法の有効性・安全性を確認するための第II相臨床試験を計画した.[方法]主評価項目は奏効率,副次的評価項目は無増悪生存期間,安全性(手足症候群発生割合),治療成功期間とした.本試験では全例に対し医師,看護師,薬剤師によるチームで副作用対策に取り組んだ.この結果,副作用発現率の低下と相対的用量強度の維持に有効であったため報告する.国内I/II相試験であるJO19380試験での手足症候群(HFS)発現率はgrade2/3が17.2%/1.7%であったが当院では13.3%/0%と良好な結果であった.相対的用量強度は6コース時点でL-OHP 89.2%,Xeloda 91.0%で良好であった.またその効果はCR/PR/NC/PD割合がそれぞれ10%/56.7%/16.7%/3.3%で奏効率66.7%,病勢制御率96.7%と満足できる結果であった.[結語]今後も増加するであろう外来での抗癌剤治療では,自宅での管理がより一層重要となる.チームでの取り組みは今後更に必要になると考えられる.(著者抄録)
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日本大腸肛門病学会雑誌 65(6) 328-334 2012年2009年9月に大腸癌に対するda Vinci Surgical Systemを用いたロボット手術を導入し,これまでに20例を経験した.今回は,そのなかで下部直腸癌3例に対して内括約筋切除術(ISR)を施行したので,その手技と手術成績を報告する.術前診断でcT1の2例と,経肛門的腫瘍切除(MITAS)術後の1例であり,いずれも側方郭清の必要のない症例を選択した.平均手術時間は512分,出血量は113gで,術後平均在院日数は9日であった.1例に骨盤内膿瘍を認めたが,保存的治療で軽快した.病理組織検査で,郭清リンパ節は平均17個であり,Surgical Marginも全例negativeであった.Learning curveによる手術時間の短縮とさらなる症例の蓄積によってfeasibilityと安全性を示す必要があると考えられた.(著者抄録)