紙本 薫, 山田 健太郎, 大村 眞弘, 阿南 知世, 山田 剛平, 金井 秀樹, 橋本 信和, 大野 貴之, 出村 光一朗, 松尾 州佐久, 北村 拓海, 竹村 景史, 佐伯 知昭, 赤尾 雅也, 田中 義人, 荒木 幸子, 佐藤 千香子, 前田 剛志, 溝口 達也, 神田 佳洋, 齋木 真郎, 稲垣 明子, 山田 紀代美, 荒川 敏
名古屋市立病院紀要 36 71-77 2014年4月
「守山区医師会・脳卒中診療情報提供シート」(以下シート)は,診療所の医師が脳卒中を疑った際,診断・治療を依頼する病院に対し,病状,既往歴,処方内容等を簡便に情報提供する目的で作成されたものである。短時間で記載できるように手書きとし,高血圧,糖尿病,心房細動などの有無を丸で囲む方式や身体図に運動麻痺や感覚障害のある部位を図示するようになっている。守山区医師会からこのシートを当院との間で実際に使用して脳卒中患者のトリアージに役立つかどうかを検証し,シート自体の使いやすさ,記載項目,記載方法などについて改善点を見出してほしいとの依頼があった。シートを用いて紹介された25例を対象とし,診療に当たった医師にアンケートを行い,依頼内容について検討した。トリアージに役立つかどうかについて,約7割の医師からシートが大変役立ったか少し役立ったとの回答があり有用と考えられた。シート自体は既往歴,現病歴の確認,症状,内服薬の把握が容易であり,身体図により視覚的に症状をとらえやすいという意見が多かったが,手書きゆえに字が読みにくいという指摘も多かった。記載項目にNIHSS,失語症,頭痛やめまい,仮診断名やrule outしてほしい疾患を追加する,逆に項目を減らし,発症時刻,既往症,処方内容くらいにするという相反する意見が出された。これらの意見は今後のシートの方向性として,脳卒中の診療情報に特化し,より専門性の高い書式とするのか,逆に脳卒中を主とするものの,めまい,頭痛や身体図を利用して末梢神経疾患など神経疾患全般をより広くカバーする書式にするのか,シートの将来像を暗示するものとして興味深い。いずれの方向に進むにせよ,より多くの医師会の先生方に利用していただけることが最重要であり,シートが脳卒中の病診連携深耕の一翼を担ってくれることを期待していきたい。(著者抄録)