伊藤 泰平, 剣持 敬, 栗原 啓, 會田 直弘, 松島 肇
移植 55(Supplement) 291_1-291_1 2020年
症例は30歳代,女性.糖尿病歴21年,透析歴5年で2018年7月に脳死下膵腎同時移植を施行された.ドナーは6歳以下の男児で,死因は低酸素脳症であった.移植直後よりインスリン,透析離脱し,以降もHbA1c 5.1%前後,Cre 0.8mg/dl前後を維持していた.移植後142日目に下血を認め,再入院した.造影CTでは小腸の一部が拡張し,粘膜の浮腫,造影異常を認め,出血源と判断したが,保存的に軽快した.移植後176日目に発熱のため,再々入院となった.PTLDも懸念し. PETを施行した.PETでは一部の拡張腸管のみに集積を認めた.後日,腸追及検査を施行したところ,この拡張腸管には腸追求によるガストログラフィンが流入しなかったため,Blind loop syndrome(BSL)と診断した.患者の同意がなかなか得られず,移植後234日目にようやく拡張腸管(blind loop)の切除術を行い,以降,発熱,下痢は軽快した.しかし,この手術前からAMY,Lipase,Creの上昇を認め,手術前後にステロイドパルス療法1回ずつ施行した. この間2回の移植腎生検を施行したが,診断はいずれも拒絶反応であった. AMY,Lipase,Creは一時低下するものの再上昇を認めるため,2回目の腎生検後,rATGを投与し,以降はHbA1c 5.1%,Cre 1.4前後を維持している.