坂部 慶子, 市川 亮子, 河合 智之, 野田 佳照, 伊藤 真友子, 木下 孝一, 大江 収子, 加藤 利奈, 塚田 和彦, 関谷 隆夫, 長谷川 清志, 宇田川 康博, 平澤 浩, 黒田 誠
東海産科婦人科学会雑誌, 49 183-188, Feb, 2013
ベセスダシステム2001における異型腺細胞(Atypical glandular cell、以下AGC)は低頻度かつ細胞形態学的検討が十分でなく、その臨床的取り扱いについては苦慮することが多い。今回、2009年4月から2011年10月までに当院にて子宮頸部細胞診を行った4256例中AGCと診断された23例(0.54%)について、その組織学的所見と取り扱いについて後方視的に検討した。AGC症例23例の年齢中央値は45歳(27〜76歳)で、AGC-not otherwise specified(NOS)が21例、AGC-favor neoplastic(FN)は2例であった。16例にコルポスコピーが施行され、NCF 6例、ACF 10例であった。組織学的診断の内訳は、高度病変(CIN2以上の異形成、上皮内癌および浸潤癌)8例、CIN1 3例、良性または病変を認めなかった症例9例、その他3例(頸部扁平上皮癌同時化学放射線療法(CCRT)後1例、頸部扁平上皮癌CCRT後再発1例、および進行乳癌1例)であった。高度病変の詳細は頸部腺癌4例、AIS 1例、頸部腺扁平上皮癌1例、子宮体部類内膜腺癌2例であった。AGCには多岐にわたる高度病変が含まれている可能性が高く、AGC診断後に漫然と子宮頸部細胞診とHPVテストを繰り返すことは病変検出の感度が低く推奨されない。取り扱いはASCCPのガイドラインに準拠する。AGC-NOS、AGC-FNともにコルポスコピー、頸管内生検、HPVテスト、35歳以上では内膜生検が推奨されている。AGC-FNの症例で、精査により明らかな病変が明確ではない場合、積極的に診断的切除術を考慮すべきである。また、AGCと診断された症例に対し、p16やCarbonic Anhydrase IX(CA-IX)などの免疫細胞化学を併用することにより、診断精度の上昇が期待される。(著者抄録)