服部 基一, 桑原 未代子, 辻川 孝昭, 近藤 立子, 相澤 貴子, 鷲見 裕子, 日比 五郎, 吉村 陽子, 中島 龍夫
日本口蓋裂学会雑誌 22(2) 53-66 1997年4月30日
1986年8月から1992年10.月までに,藤田保健衛生大学医学部口唇口蓋裂センターを受診し,直ちに口蓋床を装着し,新生児期を中心に早期口唇形成術が施行され,満3歳を経過するまで継続的に観察し得た127名(男児76名,女児51名)について,新生児期における歯の萌出異常も含め,乳歯咬合完成期における乳歯歯数異常について,歯列模型,パノラマX線写真および歯科用X線写真を用いて調査検討した.幼稚園児1122名の口膣診査の結果を比較対照として用い,以下の結果を得た.<BR>1.乳歯歯数不足では,顎裂部に該当する上顎乳側切歯の先天欠如が11.8%認められた.また,疾患群の3.1%で早期に乳歯が脱落したことを確認した.下顎または顎裂部以外の部位では疾患群と対照群との問に有意の差は認められなかった.<BR>2.乳歯歯数過剰の症例は23例18.1%と疾患群が有意に多く,特に口唇裂,唇顎裂症例では34.1%の高率を示した.<BR>3.正常乳歯が結合した癒合歯の発生頻度は疾患群,対照群で差異が認められなかった.また,乳歯双生歯については,過剰歯の多発を示した疾患群に多くみられ,口唇裂,唇顎裂の48例では半数の24例において乳歯過剰歯または乳歯双生歯を保有していた.