香西 伸彦, 鶴田 京子, 山北 高志, 松永 佳世子, 赤松 浩彦, 溝口 良順
西日本皮膚科 72(2) 106-110 2010年4月
40歳,女性。当科初診の約5週間前より背部の皮疹に気付くも放置していた。徐々に拡大してきたため近医を受診した。当科初診の約5年前にも同様の症状が両上肢に出現し,他院で精査加療を受けるも原因不明のまま陥凹病変が残存している。今回精査,加療を目的に当科へ紹介され2007年6月に受診した。右背部から正中を越えて皮下硬結,腫脹を,両下肢に圧痛,浸潤を伴う紅斑を認めた。検査所見ではLDH,フェリチンの著明な上昇,GOT,GPTの上昇を,病理組織学的所見ではリンパ球の浸潤を主体としたlobular panniculitisの像を呈し,bean-bag cellを確認した。さらに免疫染色ではCD4(-),CD8(+),CD30(-),CD56(-),CD68(+),EBV(-)であったことから最終的にsubcutaneous panniculitis-like T-cell lymphomaと診断した。プレドニゾロンを30mg/日より始めたところ,両下肢の紅斑は消退し,背部の皮下硬結も徐々に縮小し腫脹は軽減した。プレドニゾロンを10mg/日まで漸減した時点でLDH,フェリチンの著明な上昇と全身倦怠感,皮下結節,紅斑などの症状の再燃を2度認め増量を行った。初診から5ヵ月の時点でプレドニゾロン13mg/日で加療中であるが,皮膚病変,全身症状および検査所見の異常は認めていない。(著者抄録)