田代 恭子, 渡邊 順子, 青木 久美子, 稲場 美佐, 井上 かおり, 柳内 千尋, 鈴谷 由吏, 石井 宏美, 木下 幸恵, 但馬 剛, 依藤 亨, 重松 陽介, 前田 康博, 中島 葉子, 猪口 隆洋, 松石 豊次郎
日本マス・スクリーニング学会誌 25(3) 295-302 2015年12月
無症候性の最軽症型プロピオン酸血症と臨床的に診断した8例について、4ヵ月から14歳5ヵ月(平均観察期間は67ヵ月)までの臨床経過および血中・尿中の異常代謝産物の値を検討した。6例についてPCCB遺伝子解析を行い、12アレル中、10アレルにおいて最軽症型プロピオン酸血症で報告されているPCCB p.Y435C変異を認めた。リンパ球を用いたプロピオニル-CoAカルボキシラーゼ活性測定では、測定した6例で6.4〜19.6%の残存酵素活性を確認した。最軽症型プロピオン酸血症と重症型のプロピオン酸血症との比較において、新生児期ろ紙血でのプロピオニルカルニチン、プロピオニルカルニチン/アセチルカルニチン比は異なる分布を示しており、2つの病型の鑑別に有用であった。追跡期間内での血清プロピオニルカルニチン、尿中メチルクエン酸は変動するものの、最軽症型プロピオン酸血症のそれぞれの最大値は重症型のプロピオン酸血症の最小値を超えることはなく、フォローアップ期間中においても2つの病型は明確に区別することが可能であった。全ての症例が無症候性であり、蛋白摂取制限を殆ど必要とせず良好な経過であることが確認できた。(著者抄録)