高味 良行, 臼井 真人, 吉川 雅治, 平手 裕市, 宮田 義弥, 大宮 孝, 石原 智嘉
心臓 26(6) 591-597 1994年
冠動脈疾患の心機能評価では,収縮機能のみならず,拡張機能も対象としなければならない.今回我々は,CABGの前後で左室拡張機能がいかに変化するかを,CABG施行症例25例(男25例・女5例)にドップラー心エコー法を施行し,検討した.<BR>左室流入波形から,左室拡張機能の指標として1)E:拡張早期ピーク速度,2)A:心房収縮ピーク速度,3)E/A,4)Earea:拡張早期の時間流速積分値,5)A area:心房収縮期の時間流速積分値,6)E/Aarea:4)と5)の比,7)1/3TVI:時間流速積分値の1/3,8)IVRT:等容性弛緩時間,9)AT:収縮早期の加速時間,10)DT:収縮早期の減速時間,11)DR:減速率,12)NPFR:normalized peak fillingrateを用いた.また,対象を術後造影で中隔枝がバイパスグラフトから灌流される群(G群)と,左冠動脈から灌流される群(N群)とに分け,心エコーのデータを比較した.<BR>E,E/A,E area,E/A areaは術後有意に増加し,A,A areaは術後有意に減少し,IVRTは,有意差はないものの,術後正常範囲に入り,減少する傾向にあった.術前後の変化率で比較すると,G群の方がN群より有意に改善していた.<BR>虚血により障害されていたhibernating myocardiumの左室拡張機能は,CABGにより改善するといえる.またCABGによる左室拡張機能の改善の本質は,心臓の中で最も血流を要し,右室・左室の機能上重要な役割を果たす心室中隔の血行の改善であると考えられた.