安岡 宏展, 浅野 之夫, 冨重 博一, 石原 慎, 伊東 昌広, 川辺 則彦, 永田 英俊, 荒川 敏, 伊藤 良太郎, 清水 謙太郎, 伊勢谷 昌志, 大城 友有子, 河合 永季, 堀口 明彦
膵臓 32(6) 912-919 2017年12月
腎細胞癌の転移臓器として膵臓は比較的稀であるが、転移性膵腫瘍の原発巣は腎臓の頻度が高いと言われている。また、再発までの期間も10年以上の報告例が多く長期にわたる経過観察が必要である。当科では2008年から2015年の間に5例の腎細胞癌膵転移の切除例を経験した。転移までの期間は最長16年であった。5例中3例が多発症例であった。3例の多発症例では、多発病変が造影CTの早期動脈相にて強濃染される腫瘍として明瞭に描出された。全例に根治切除が施行され、多発例のうち2例は可能な限り膵を温存する術式を選択し、1例は胃全摘を合併した膵全摘となった。多発する転移性膵腫瘍の術式は様々であり、膵全摘を推奨する報告と機能温存術式を推奨する報告が散見される。根治性と機能温存の両面から慎重に術式を決定することが必須である。(著者抄録)