中村真紀, 坂田裕介, 小林秀行, 加藤憲, 山上潤一, 米本倉基
医学検査 70(1) 106-115 2021年1月 査読有り
<p>臨床検査部門のトップマネージャーが,どのような管理職行動をすれば,部下の職務満足度を向上させるかについての科学的な研究はこれまでなされておらず,その手段は他職種のプログラムに依存しているところが大きい。そこで本研究は現場の臨床検査技師長など部門のトップマネージャーの行動が部下の職場満足度に与える影響や,部下が求める優れた管理職行動の特性を科学的に明らかにすることでこれからのマネジメント教育の指標を得ることを目的とした。方法は難波らの先行研究を引用し,管理職行動24項目,職務満足度26項目,性別等の属性を含む計69項目を150名の臨床検査技師を対象にWEBで調査を行い,得られた回答から管理職行動と職務満足度のデータを得点化し分析を行った。その結果,トップマネージャーの管理職行動が部下の職務満足度に与える影響は極めて大きく,臨床検査技師におけるトップマネージャーへのマネジメント教育の必要性が確認できた。また,管理職行動には「キャリア重視」と「働きやすさ重視」の2つの重要な役割行動があり,そのどちらかが欠けると部下の職務不満足は改善されないことが示唆された。とりわけ,トップマネージャーにおいては,性差を問わず若年層が働きやすい職場環境の充実と,役職者に対して職場の良好な人間関係構築のための配慮を同時に遂行することが重要であり,この両者からの期待役割に対してバランスよく応えられるマネジメント教育が必要と考えられる。</p>