木全 正嗣, 水口 忠, 三宅 悠三, 野村 僚子, 山本 直樹, 谷川 篤宏, 堀口 正之
臨床眼科, 74(6) 721-728, Jun, 2020
<文献概要>目的:網膜と水晶体前嚢の異常を示し,水晶体再建術により良好な視力を得たアルポート症候群の症例の報告。症例:27歳男性。両眼の視力低下で当院紹介となった。既往歴にアルポート症候群で腎移植歴があった。所見:矯正視力は右0.3,左0.5で,両眼に前部円錐水晶体があり,両眼黄斑耳側に白色斑の散在を認め,光干渉断層計では同部位の網膜内層菲薄化を認めた。黄斑微小視野計では同部位に感度低下を認めず,多局所網膜電図でも同部位に一致した振幅の減弱はなかった。当院にて両眼の水晶体再建術を施行した。採取した前嚢は菲薄化し,亀裂を無数に認めた。水晶体上皮細胞の空胞化と細胞内小器官の減少が観察された。術後矯正視力は両眼とも1.0と改善した。結語:網膜形態異常と前部円錐水晶体を伴うアルポート症候群を経験した。検査上,前部円錐水晶体による屈折異常を認めたが,網膜菲薄部位に一致する明らかな機能的異常は認めず,水晶体再建術により良好な視力を得られた。前部円錐水晶体は,水晶体嚢の脆弱化による構造異常のためと考えられた。