橋口 由香里, 小中 義禎, 谷川 明, 芳野 啓, 田中 義和, 播 悠介, 藤永 潤, 正木 幸作, 坂東 弘教, 廣部 真由美, 片山 茂明, 上浦 望, 村田 成正, 芳野 弘, 深津 泰英, 後藤 格, 大久保 美歩, 野中 英美, 福永 馨, 八木 規夫, 森田 宗孝, 坂井 誠, 宮崎 宣弘, 谷 聡, 老籾 宗忠, 松岡 彰, 山本 清子, 岡田 志緒子, 藤森 明
甲南病院医学雑誌 28 10-13 2011年4月
粟粒結核とは、血行性播種性結核症であり、細菌学的あるいは病理学的に、同時に少なくとも2臓器以上に活動性結核巣を認め、胸部X線上、びまん性の粟粒大の結核病巣が散布しているものと定義される。今回我々は、透析導入後に粟粒結核を発症しARDSを併発した症例を経験した。粟粒結核にARDSを併発すると、死亡率89%と極めて予後不良であると報告される中、救命することができたため報告する。症例は62歳女性。血液透析導入4ヵ月後に、発熱、全身倦怠感を主訴に当院へ紹介受診した。低酸素血症と炎症反応高値、Alb低値、ALP高値を認め、胸部X線において典型的な粒状影を認めたため、粟粒結核と診断しINH+RFP+EBの投与を開始した。第3病日に低酸素血症が進行し、胸部X線写真で両側びまん性浸潤陰影を認め、ARDSに進展したものと判断し、気管挿管し人工呼吸器管理を行うとともにステロイドパルス療法を開始した。その際の吸引痰よりガフキー2号、PCR法で結核菌と同定した。同日よりINH+RFP+PZA+SMの4剤併用療法へ変更した。ステロイド治療が奏効し第10病日に抜管しえた。第17病日に結核病床を有する他院へ転院しINH+RFP+PZA+EBにて治療した。感染性が無いことが確認され、維持透析とリハビリテーション目的に第59病日に当院へ再入院し、PZAとEBを計2ヵ月で投与終了した。現在化学療法にて画像所見は改善しており、INH+RFPを計12ヵ月投与し治療終了予定である。結核は、免疫機能が低下した透析患者における重要な感染症であるが、肺外結核など非典型例が多く、毎月心胸比管理目的に胸部X線を施行していても診断困難な場合がある。(著者抄録)