近藤 ゆか, 西部 俊哉, 渡辺 徹, 星野 竜, 服部 浩治, 山下 満, 高木 靖, 安藤 太三, 清水 元良, 西部 正泰
日本血管外科学会雑誌 16(2) 49-54 2007年4月
閉塞性動脈硬化症に対する血管内治療は、腸骨動脈領域では良好な成績が示されており、TASC(TransAtlantic Inter-Society Consensus)の治療指針においてもTASC C,D病変を除き手術的治療に代わる方法として位置づけられている。しかし、大腿・下腿動脈領域においてはその適応・成績に関していまだ一定の見解は得られておらず、施設や術者の方針にゆだねられているところが多い。今回われわれは、透析や糖尿病を合併したハイリスク症例や重症虚血肢に対して積極的に血管内治療を行い、比較的良好な成績が得られたので報告する。2005年2月から2006年9月の間に血管内治療を行った29症例、37肢、44病変を対象とした。内訳は男性23例、女性6例、平均年齢は71歳であった。病変部位は浅大腿動脈23病変、膝窩動脈13病変、下腿動脈8病変であった。浅大腿病変はステント留置術を行い、膝下膝窩動脈・下腿動脈病変はバルーン拡張術を行った。治療の初期成功率はいずれも100%で、合併症は膝窩動脈血腫1例のみで死亡はなかった。浅大腿動脈病変の一次開存率は3ヵ月で94%、6ヵ月で75%、12ヵ月で66%であり、一次補助開存率はそれぞれ100%,75%,66%であった。救肢率はそれぞれ96%,96%,85%であった。生存率は3ヵ月で100%、6ヵ月で93%、12ヵ月で93%であった。膝下膝窩動脈・下腿動脈病変の一次開存率は3ヵ月で89%、6ヵ月で67%であり、一次補助開存率はそれぞれ89%,89%であった。救肢率は3ヵ月、6ヵ月で100%であった。生存率は3ヵ月で86%、6ヵ月で86%であった。鼠径部以下の病変に対する血管内治療はバイパス手術と比較して長期の開存率は劣るが、低侵襲で早期社会復帰が可能であり、合併症や死亡が少ないなどの点から、重症虚血肢やハイリスク症例に対する治療の選択肢になりうると考えられた。(著者抄録)