山下 満, 安藤 太三, 佐藤 雅人, 服部 浩治, 星野 竜, 近藤 ゆか
Therapeutic Research 26(6) 1121-1124 2005年6月
53歳女.7年前に急性肺血栓塞栓症と診断されワルファリン内服を開始したが,3年ほどで自己中止していた.今回,感冒から呼吸困難が増悪し,精査で肺動脈圧は90/30mmHg,肺血管抵抗は1271dyne/sec/cm5と上昇し,心拍出量低下,低炭酸ガス血症,低酸素血症を呈していた.肺血流シンチで両側肺野に楔状の陰影欠損を,肺動脈造影ではpouch signを伴った閉塞所見を認めた.慢性肺血栓塞栓症の診断で体外循環下に開胸術を施行し,右肺動脈および左肺動脈の血栓内膜摘除術を行った.術後2日目に肺動脈圧の上昇を認め,PGI2を開始したが体血圧の低下を来たし,第4病日にPCPS回路交換を行った.第6病日よりweaningを再開し,体血圧低下に対してノルアドレナリン,ドブタミンを増量して第7病日に離脱可能となった.人工呼吸器は6cmH2Oから2cmH2Oまで徐々に下げ,第19病日に抜管した.第48病日には平均肺動脈圧16mmHg,肺血管抵抗は4.94dyne/sec/cm5と低下し,心拍出量も改善した