山下 満, 安藤 太三, 佐藤 雅人, 小林 靖典, 金子 完, 近藤 ゆか, 武藤 紹士
Therapeutic Research 24(4) 565-566 2003年4月
43歳女.2年前に急性肺血栓塞栓症と診断され,ワーファリンを処方されたが,自己中止していた.呼吸困難,意識消失が出現し,胸部CTで肺動脈の拡大と血栓による狭窄・閉塞が認められた.肺血流シンチで両側にび漫性の陰影欠損を,肺動脈造影では肺動脈区域枝の閉塞と肺野の血管陰影減少を,右心カテーテル検査で肺高血圧が認められた.手術適応と判断し,胸骨正中切開で上行大動脈送血,上大静脈・下大静脈脱血による体外循環下に16℃の超低体温で間欠的循環停止法を行い,右肺動脈,左肺動脈の順に血栓内膜摘除術を施行した.剥離にはJamieson剥離子を用い,血栓内膜を一つながりにして剥がした.右主肺動脈を縫合閉鎖後,左主肺動脈を縦切開して同様に血栓内膜摘除を行った.体外循環時間は224分,心停止時間は152分,循環停止時間は合計72分であった.術後肺高血圧は改善し,肺野の血管陰影増強が認められた