後藤田 卓志, 赤松 拓司, 阿部 清一郎, 島谷 昌明, 中井 陽介, 八田 和久, 細江 直樹, 三浦 義正, 宮原 良二, 山口 太輔, 吉田 直久, 川口 洋佑, 福田 眞作, 磯本 一, 入澤 篤志, 岩男 泰, 浦岡 俊夫, 横田 美幸, 中山 健夫, 藤本 一眞, 井上 晴洋, 日本消化器内視鏡学会内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン委員会, 日本消化器内視鏡学会, 日本麻酔科学会
Gastroenterological Endoscopy 62(9) 1635-1681 2020年9月
消化器内視鏡分野における鎮静のニーズがさらに高まり日常診療において重要度の高い医療行為となっている.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力のもと「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」の作成にあたり,安全に検査・治療を遂行するためには何が問われているかを実地診療における疑問や問題として取り上げた.そのうえで,20項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成にあたっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,推奨の強さとエビデンスの質(強さ)を示した.現在日常的に行われている消化器内視鏡診療(以下,内視鏡)における鎮静の臨床的疑問と問題に関して現時点でのステートメントを示すことができた.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,専門家のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.また,鎮静に主に使用されているベンゾジアゼピン系の薬剤は保険適用外であるのが現状で,費用負担に関する不利益の検討ができなかった.また,診療ガイドライン作成にあたって受益者である患者・市民の視点を反映することが今後の課題である.なお,ガイドラインは現時点でのエビデンスの質(強さ)に基づいた標準的な指針であり,医療の現場で患者と医療者による意思決定を支援するものである.よって,個々の患者の希望,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情や医師の裁量権によって柔軟に対応する必要がある.(著者抄録)