小出欣和, 前田耕太郎, 花井恒一, 佐藤美信, 升森宏次, 松岡宏, 勝野秀稔, 塩田規帆, 遠藤智美, 松岡伸司, 八田浩平, 水野真広, 遠山邦宏
日本大腸肛門病会誌 65(10) 840-846 2012年 査読有り
直腸脱に対する手術治療において,経腹式直腸固定術は,経会陰的手術よりも,全身に与える侵襲は大きいが根治性が高い術式である.直腸脱症例の多くは高齢者であるが,健康状態が良く,安全に全身麻酔が施行可能であれば,根治性の高い経腹的直腸固定術を提供すべきである.近年,低侵襲である腹腔鏡下手術が爆発的に普及し,今年4月より,直腸脱症例に対しても,腹腔鏡下直腸固定術が保険適応となり,低侵襲で,根治性の高い直腸固定術が施行可能となった.手術のポイントは,直腸を必要かつ十分に剥離授動し,引き上げ,確実な固定を行うことであるが,手術手技は各施設によって多少異なっている.直腸の剥離はどの程度行うのか,側方靱帯を切離するのか温存するか,直腸の固定はメッシュを使用するか,縫合固定か,腸管切除を行うかどうか,腹膜修復・腹膜挙上を行うかどうか,など共通した手法はなく,どの手術手技がよいか,今後,Prospective comparative studyを行い,直腸脱に対する治療法のガイドラインを作成し,統一した治療法,手術手技の確立が必要である.(著者抄録)