林 宏樹, 深谷 奈津子, 小野木 健詞, 中村 智信, 坂本 いずみ, 森永 貴理, 佐藤 文彦, 森田 良樹, 丸山 彰一, 湯澤 由起夫, 松尾 清一, 伊藤 恭彦
臨床体液 2006年7月
16歳女.生後1ヵ月時に痙攣発作があり,このとき低Mg・Ca血症を指摘された.以来,補充療法を受けていたが,意識消失発作をきたすため,今回当科に紹介された.初診時,magnesium sulfate 8g/日,calcium L-asparate 2g/日,alfacalcidol 3μg/日の内服下で血中Mgは0.6mEq/L,Caは4.5mEq/Lであった.低Mgにもかかわらず腸管でのMg吸収率は約2%(通常4%)と低かった.Mg負荷試験を行ったところ,intact PTHは負荷後すみやかに上昇し,低Mgによる分泌障害と判断した.また,負荷に伴い尿Ca/Cr比が上昇し,尿細管paracellular pathwayでのMgとCaの競合的阻害は保たれていることが示された.そこで,治療は腸管におけるnonsaturable paracellular absorptionを期待してmagnesium sulfateの投与量を15g/日に増量し,1ヵ月後,Mgは1.0mEq/Lに上昇した