研究者業績
基本情報
論文
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小児内科 55(11) 1811-1815 2023年11月症例は5歳女児で、発熱、悪心、胸痛を主訴とした。砂遊びによる両手指の慢性湿疹に対して外用加療中であり、近医受診後も発熱が持続し、入院時には胸骨直上に辺縁不明瞭な発赤、腫脹を認め、CT検査で胸骨体の両側に低吸収帯を認めた。感染症の疑いで抗菌薬治療を開始し、血液培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が同定されたため、バンコマイシン(VCM)を併用した。その結果、解熱と胸痛の軽快が得られ、MRSAによる原発性胸骨骨髄炎と診断した。その後はCRP陰性化を確認してリネゾリド内服に変更し、VCMと併せて計6週間の抗MRSA薬による治療を行ったところ、炎症の再燃や血小板減少は認めなかった。本症例では手指の慢性湿疹が感染経路と考えられ、慢性湿疹を背景に持つ患児では薬剤耐性菌による全身性の感染症に留意する必要があると考えられた。
MISC
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PEDIATRIC BLOOD & CANCER 67 2020年12月
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日本医師会雑誌 148(特別1) S287-S287 2019年6月
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臨床薬理の進歩 (40) 131-139 2019年6月dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)欠損症患者のスクリーニング法として、肝臓におけるDPD活性と相関があるヒト末梢血リンパ球中DPDを用い、酵素反応後の生成物をUPLC-MS/MSで定量する方法について検討した。確立した定量法により、健常人9名と5-Fluorouracil(5-FU)投与患者17名のDPD活性を測定した。健常人のリンパ球を利用した酵素反応では、DHT生成量(平均値±標準偏差)は13.5±2.5pmol/4h/μg proteinであり、範囲は9.3〜15.7pmol/4h/μg proteinであった。重篤な副作用を呈しなかった5-FU投与患者群では、DHT生成量は7.2〜17.0pmol/4h/μg proteinとなり、DPD活性は正常平均値の53.3〜126.2%であった。健常人平均値の-2SD(8.5pmol/4h/μg protein)以下であった患者が2名存在したが、重篤な副作用は認めなかった。TS-1内服後にGrade 4以上の副作用を認めた1例では、DHT生成量は1.9pmol/4h/μg proteinで、DPD酵素活性が正常平均値の14.4%と有意に(Student's t検定、P<0.001)低値であった。DPD活性が50%程度であれば、5-FUの投与による重篤な副作用は発現しないと考えるが、症例数が少ないため活性と副作用発現の関連の評価には、引き続き患者データを集める必要がある。本研究で確立した患者リンパ球を用いたDPD活性測定は、5-FU投与前スクリーニングとして有用であり、さらに遺伝子検査によるDPYD多型解析とDPD活性測定を組み合わせることで、日本人における5-FU副作用発現をきたすDPYD遺伝子多型の基盤作りにつながると考えられた。
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日本小児体液研究会誌 11 29-33 2019年5月症例:12歳女児。重症新生児仮死による脳性麻痺、慢性腎不全の診断で重症心身障害児として外来管理を行なっていた。入院の3日前から頻回嘔吐、喘鳴が出現し徐々に増悪、経管栄養も困難となったため当院救急外来を受診した。発熱、喘鳴、ツルゴールの低下、10%の体重減少を認め、検査にて高Na血症および右上肺野の浸潤影を認めたことから、誤嚥性肺炎、高張性脱水の診断で入院となった。高張性脱水に対し、等張液を用いた輸液を開始したところ、脱水所見は改善したものの血清Na濃度は上昇を続けた。輸液を低張Na製剤に変更した後も血清Naが上昇するため、最終的に5%グルコース液にて1日水分量を最低100ml/kgとなるよう輸液量を維持したところ、数日で血清Na濃度は改善した。高Na血症下で慢性腎不全状態としては不相応に血清K濃度が低下する傾向があったことから、アルドステロン作用の関与を疑い追加検査を行ったところ、著明な高アルドステロン血症および抗利尿ホルモン(AVP)の高値を認めた。全身状態の改善後、自宅での充分な水分管理を続けたところ、約3ヵ月後には血漿アルドステロン値およびAVPの改善がみられ、電解質の異常は認められなかった。患児は胃食道逆流により日常的に嘔吐が認められ、慢性的な水分、栄養注入量の不足状態にあったことに加え、腎不全によるAVP反応性低下による希釈尿排泄が慢性的な脱水状態を生じ、アルドステロンの過剰分泌を来したものと考えられた。このようなNa排泄障害下でのNa含有製剤による輸液が容易に高Na血症を招いたと考えられた。本例のような特殊な背景がある患児に対して輸液を行う際には、基礎疾患とそれに伴う病態を十分に把握しておくことが重要と考えられた。(著者抄録)
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日本小児体液研究会誌 11 41-45 2019年5月症例は9ヵ月男児。当院初診の約3ヵ月前に熱源不明の発熱で近医に入院治療を受け、その後2ヵ月間で約1.5kgの体重減少と活気不良を認めたため精査加療目的で当科紹介受診した。初診時、脱水兆候と無呼吸発作がみられ、血液検査で著明な電解質異常と代謝性アルカローシス、高レニン・高アルドステロン血症を認めた。入院後に直ちに電解質補正を実施し徐々に全身状態、検査値とも改善した。輸液中止後も電解質が正常であることを確認して退院とした。しかし退院1ヵ月後に誘因なく同様の活気不良、電解質異常と代謝性アルカローシスを生じ、再び入院治療を行った。Bartter症候群(BS)・Gitelman症候群(GS)など遺伝性塩類喪失性尿細管機能異常症を疑い遺伝子解析を行ったところCLCNKAにヘテロでの変異を認めたが、既存の病型分類には当てはまらずBS/GSは否定的と考えられた。一方、本例は発症の約3ヵ月前に熱源不明の発熱で入院治療を行った後から体重減少を認めており、腎盂腎炎や尿細管間質性腎炎などの感染症、もしくは薬剤性による間質性腎炎に伴う広汎な尿細管障害をきっかけとする慢性的な電解質異常や哺乳不良の結果、偽性BSを呈した可能性が考えられた。(著者抄録)
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日本マス・スクリーニング学会誌 29(1) 39-50 2019年5月重症複合免疫不全症(SCID)は致死的な先天性の免疫不全症であるが、T細胞の新生能の指標であるT-cell receptor excision circle(TREC)を用いた新生児マススクリーニングが一部の国で開始され、早期診断・治療により、死亡者数の低下、患児の生活の質の向上に貢献している。2017年4月より、愛知県内で出生した新生児を対象に、本邦初のSCIDスクリーニングを開始した。愛知県で出生し、保護者の同意が得られた新生児を対象とし、従来の代謝スクリーニング採血時にSCIDスクリーニング用に用意した専用の別濾紙への追加採取を行い、TRECを測定した。スクリーニング検査陽性新生児に対する精密検査は、リンパ球サブセット解析による免疫能の評価を行うとともに次世代シークエンサーによる300種類を超える原発性免疫不全症の原因遺伝子に対する網羅的な遺伝子解析を施行した。1年間で22,865人の新生児スクリーニングを行った。SCID患者は見出されなかったが、DiGeorge症候群、Wiskott-Aldrich症候群を含む11例のT細胞数減少症例を発見し、早期に治療を開始した。SCIDスクリーニングでは、非SCIDリンパ球減少症も多く見つかっており、精密検査体制の整備や診断後の治療体制の確立が重要である。(著者抄録)
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日本先天代謝異常学会雑誌 34 181-181 2018年9月
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JSBMS Letters 43(Suppl.) 140-140 2018年8月
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日本マス・スクリーニング学会誌 27(3) 289-295 2017年12月【背景】Congenital anomalies of kidney and urinary tract(CAKUT)は腎不全に至る先天異常である。近年CAKUTに対して早期介入することで腎不全までの時期を延ばした報告が散見されており、CAKUT患者の早期発見は重要視されている。本邦ではCAKUT早期発見のために3歳児検尿を行っているが、実際にはCAKUT児の10%しか発見できていない。我々は新生児タンデムマススクリーニングの手法で、腎機能評価の指標として用いられているクレアチニン(Cr)を測定する方法を検討した。【方法】検体の抽出方法は現行の新生児マススクリーニングの手法に従った。Crの定量はD3-Crを用いて内部標準法で行った。実際に新生児検体190検体を用いて、新生児濾紙血Crの基準値作成を行った。【結果】小児93検体で、単回帰解析を行ったところ濾紙血Cr(mg/dL)=0.56×血清Cr(mg/dL)(R=0.92)で良好な相関を認めた。新生児190例で測定したところ濾紙血Cr 0.222mg/dL(IQR:0.189、0.268)であった。性別、在胎週数、出生体重、Apgar scoreによる差は見られなかった。【結語】乾燥濾紙血を用いた新生児のCr測定法を確立した。本手法は現行のマススクリーニングをベースに構成されており、実際の運用も可能であると考える。(著者抄録)
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小児科 58(8) 805-809 2017年8月症例は11歳の女児で、10歳5ヵ月時から四肢に緊満性水疱・滲出性紅斑が出現した。近医皮膚科で副腎皮質ステロイド内服薬・外用剤、抗菌薬などが投与されたが、皮膚症状の増悪と寛解を繰り返していた。11歳3ヵ月時から口腔内潰瘍を呈するようになり、再度副腎皮質ステロイド内服薬・外用剤、抗菌薬投与を行ったが潰瘍は残存していた。11歳5ヵ月時、発熱、下腿・手掌・足背に血疱が出現したため精査加療目的で入院となった。多形紅斑、アナフィラクトイド紫斑病、血管炎などを考慮し、初期治療としてプレドニゾロンの静脈内投与を開始した。その翌日には解熱し、皮疹も徐々に改善した。その後、口腔内潰瘍を血管炎の一症状ととらえ、先行する著明な好酸球増加と気管支喘息症状の既往からChurg-Strauss症候群(CSS)と診断した。経過中、皮疹は徐々に減少、消失したが、末梢神経症状は改善したものの完全に消失しなかった。
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JSBMS Letters 42(2) 25-33 2017年6月新生児マススクリーニングはすべての新生児を対象に、放置されれば健康被害が生じる疾患を発症前に発見し介入することで障害を予防しようとする事業である。タンデム型質量分析計の普及によって、この機器を用いることで乾燥濾紙血中のアミノ酸やアシルカルニチンの一斉分析が可能であることが示され、新生児マススクリーニングへと応用され、2011年に厚生労働省母子保健課長通達が出されて全国へ普及するに至った。これにより従来の6疾患に加え新たに13疾患が対象となり、さらに6疾患について、対象とすべきか引き続き検討されている(2次対象疾患)。新生児マススクリーニングへのタンデムマス導入により、検索できる疾患数は飛躍的に増加し効果を上げている。これまでであれば明らかに急性発作の発症、すなわち重度の代謝性アシドーシスや高アンモニア血症で発見され、中枢神経等に明らかな障害をきたしたであろう有機酸代謝異常症などの症例が、発作前に発見、治療管理されることで全く問題なく成長・発育できており、多大な成果を上げている。今後の検討によりさらに適切な診断基準やフォローアップ体制を構築していくことが重要と考えられる。(著者抄録)
講演・口頭発表等
3所属学協会
5共同研究・競争的資金等の研究課題
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2022年4月 - 2025年3月
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AMED 難治性疾患実用化研究事業 2017年4月 - 2020年3月
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厚生労働科学研究費 2017年4月 - 2019年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2014年4月 - 2016年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2004年 - 2005年