鷲見 聡, 大場 悟, 伊藤 哲哉, 大久保 由美子, 植田 昭仁, 加藤 稲子, 戸苅 創
痛風と核酸代謝 29(2) 127-131 2005年12月
ピリミジンは新生児期の代謝にとって重要な役割を担っていると考えられているが,この時期の尿中ピリミジンの基準値は確立されていない.今回我々は,健康な新生児23名について,生後0日から6日,および生後1ヵ月時に,随時尿を採取した.そして,尿中オロット酸,ウラシル,シュードウリジンを高速液体クロマトグラフィー/カラムスイッチング法を用いて測定して基準値を算出した.日齢0,1,2,3,4,5,6,生後1ヵ月時の尿中オロット酸の濃度(μmol/mmolcreatinine,mean±S.D.)は,1.6±0.7,1.3±0.5,1.3±0.9,1.4±0.6,1.4±0.6,1.6±0.6,1.7±0.5,2.1±1.2であった.尿中ウラシルの濃度は,1.0±0.4,0.9±0.4,1.3±0.6,1.8±0.8,2.1±0.8,2.1±1.0,1.8±0.8,12.8±7.8であった.尿中シュードウリジンの濃度は,58.6±19.6,88.7±22.9,93.6±26.0,99.6±29.6,100.5±29.6,101.8±22.1,100.9±27.7,138.5±23.9であった.さらに,高アンモニア血症などの症状をきたす尿素サイクル異常症の新生児についても,尿中ピリミジンの分析を行った.オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症では,尿中オロット酸,ウラシルとも異常高値を示し,特に,オロット酸はアンモニアの上昇する前から増加していた.一方,カルバミルリン酸合成酵素欠損症ではオロット酸などの増加は認められなかった.以上の結果より,尿中ピリミジンの測定は新生児期の尿素サイクル異常症の診断に有用であることを確認することができた(著者抄録)