研究者業績
基本情報
論文
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小児内科 55(11) 1811-1815 2023年11月症例は5歳女児で、発熱、悪心、胸痛を主訴とした。砂遊びによる両手指の慢性湿疹に対して外用加療中であり、近医受診後も発熱が持続し、入院時には胸骨直上に辺縁不明瞭な発赤、腫脹を認め、CT検査で胸骨体の両側に低吸収帯を認めた。感染症の疑いで抗菌薬治療を開始し、血液培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が同定されたため、バンコマイシン(VCM)を併用した。その結果、解熱と胸痛の軽快が得られ、MRSAによる原発性胸骨骨髄炎と診断した。その後はCRP陰性化を確認してリネゾリド内服に変更し、VCMと併せて計6週間の抗MRSA薬による治療を行ったところ、炎症の再燃や血小板減少は認めなかった。本症例では手指の慢性湿疹が感染経路と考えられ、慢性湿疹を背景に持つ患児では薬剤耐性菌による全身性の感染症に留意する必要があると考えられた。
MISC
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新生児マススクリーニングのコホート体制、支援体制、および精度向上に関する研究 平成28年度 総括・分担研究報告書(Web) 13‐25 (WEB ONLY) 2017年
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新生児マススクリーニングのコホート体制、支援体制、および精度向上に関する研究 平成26-28年度 総合研究報告書(Web) 27‐39 (WEB ONLY) 2017年
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日本小児科学会雑誌 119(11) 1628-1632 2015年11月妊婦健診時に胎児超音波スクリーニング検査で脳室拡大を指摘された40例(男児22例、女児18例)を対象に、出生前検査・診断・出生後の管理・予後について検討した。薬物療法等の内科的治療を行ったのは先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症3例、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症1例の計4例(10%)で、在胎週数別出生時頭囲(SD)は中央値-0.4SDであった。先天性CMV感染症例は全例が聴覚障害を有し抗ウイルス薬を投与した。ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症例は胎児発育不全を認め、母体へのビオチン投与で改善し、出生後にビオチン・ビタミンB1・カルニチン投与を行った。脳室腹腔(VP)シャントを行った外科的治療群は14例(35%)で、出生時頭囲は中央値+1.9SDであり、内科的治療群、非介入群(22例)に比べ有意に大きく、内科的治療群が最小であった。22例(55%)で出生前に診断・予測が可能であった。予後は死亡が8例(20%)で、6例が1歳未満であった。
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日本マス・スクリーニング学会誌 25(1) 89-96 2015年6月新生児マス・スクリーニングにおいてガラクトース(Gal)、ガラクトース-1-リン酸(Gal-1-P)高値により検出される症例には、先天性ガラクトース代謝酵素欠損症以外の疾患も認められるが、その対応については一定の見解は得られていない。今回我々は、Gal、Gal-1-P高値により発見された症例の臨床経過を比較することにより、Galスクリーニングの意義を検討した。対象は2004年1月〜2013年12月の10年間に高ガラクトース血症の精査を目的に当科を受診し、その後の経過を追えた63例について検討した。この結果、エピメラーゼ欠損症(III型)17例、自然軽快例40例、外科的処置を要した門脈体循環シャント6例であった。初診時のGal、Gal-1-P、総胆汁酸値の比較では、III型でGal-1-Pが高値、外科的処置例では総胆汁酸が高い傾向があり、外科的介入の要否は初診時の血液検査結果からは予測困難であった。自然閉鎖しない門脈体循環シャントは外科的介入が必要で、早期発見することで予後の改善が期待できる。新生児マス・スクリーニングではガラクトース代謝酵素欠損症以外も積極的に発見していくことが有用であると思われた。(著者抄録)
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JSBMS Letters 40(1) 4-10 2015年3月先天性代謝異常症の一つであるピリミジン代謝異常症は、ピリミジンヌクレオチドの合成系や分解系における酵素欠損によっておきる疾患の総称である。その臨床症状は無症状から重度発達障害、筋緊張低下、小頭症など様々である。未だ症例数に乏しく発症頻度や遺伝子変異等の詳細は不明であり、さらなる症例の蓄積が必要とされている。ピリミジン代謝異常症のうち、合成系のオロト酸尿症と分解系のdihydropyrimidine dehydrogenase(DPDase)欠損症、dihydropyrimidinase(DHPase)欠損症およびureidopropionase(UPase)欠損症を一斉にスクリーニングする方法として、UPLC-MS/MSを用いた尿中ピリミジン代謝物濃度の定量法を検討した。本法によりDHPase欠損症、UPase欠損症患者の尿中代謝物の定量をおこなったところ、コントロールに対して大過剰の代謝物が排泄されていた。また、DPDase欠損症、DHPase欠損症患者へのフッ化ピリミジン系抗がん剤である5-fluorouracil投与により重篤な副作用が発現したと報告されており、本法の尿を用いた簡便なスクリーニングを応用することで抗がん剤の副作用を未然に防ぐことも可能である。さらに、オロト酸尿症の指標であるorotic acidは、allopurinolなどの薬剤投与によって一過性に上昇する。このため、オロト酸合成の原料となるcarbamyl phosphateが蓄積したornithine transcarbamylase(OTC)欠損症患者へのallopurinol負荷試験ではorotic acidが過剰に上昇する。このためorotic acid定量はOTC欠損症患者およびその保因者の発見にも有用である。このように、UPLC-MS/MSによるピミジン類の定量は、ピリミジン代謝異常症やOTC欠損症のスクリーニングに有用である。(著者抄録)
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小児内科 46(4) 484-489 2014年4月<Key Points>(1)脂肪酸β酸化異常症は飢餓時のエネルギー産生障害が病態の基本であり、普段無症状の児でも、飢餓、感染などにより代謝不全に陥り急激に悪化する可能性がある。(2)タンデムマスによる新生児マス・クリーニングによって発症前の状態で発見され、飢餓の予防や食事療法、体調不良時の早期からのブドウ糖投与などにより予後改善が期待できるが、予後不良な重症型や新生児期に発見できない症例も存在するため注意が必要である。(3)長鎖アシルCoAが蓄積する疾患に対するL-カルニチン投与の有効性は今のところ示されておらず、副作用発現の可能性もあることから投与は慎重になされるべきで、とくに静注製剤の使用は禁忌とされる病態もあり注意を要する。(著者抄録)
講演・口頭発表等
3所属学協会
5共同研究・競争的資金等の研究課題
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2022年4月 - 2025年3月
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AMED 難治性疾患実用化研究事業 2017年4月 - 2020年3月
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厚生労働科学研究費 2017年4月 - 2019年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2014年4月 - 2016年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2004年 - 2005年