加藤正樹, 加賀谷斉, 尾関恩, 渡辺章由, 宮坂裕之, 加藤啓之, 前田博士, 大塚圭, 才藤栄一
理学療法学 34(Supplement 2) 65-B0130 2007年4月20日
【はじめに】<BR> われわれは1996年からデーターベースを用いて患者を管理し, リハビリの効果判定等に役立てている. 患者の予後を把握することは, 限られた在院日数のなかで適切な治療を実施するために必要であり, 中でも転帰を左右する歩行能力の予後予測は重要な課題である. 今回, 当病院における急性期脳卒中患者の歩行予後予測について多重ロジスティック回帰分析を用い検討したので報告する. <BR>【対象と方法】<BR> 対象は2004年4月1日から2006年3月31日の2年間に入院し,リハビリを8日以上実施した脳卒中患者の中で,初発,発症翌日までに入院,一側性病変,開始時FIM歩行5点以下を満たす249名(男性146名,女性103名)とした. 平均年齢は70±12歳(平均値±標準偏差),疾患内訳は脳梗塞154名,脳出血76名,くも膜下出血19名,発症からリハビリ開始期間5.7日(中央値4日),リハビリ実施期間43.2日(中央値35日),在院日数48.8日(中央値40日),退院時の転帰先は自宅36%,転院64%であった. 方法は多重ロジスティック回帰分析を用いて, リハビリ開始時の評価から当院退院時歩行能力の予測式を作成した. 2004年度の患者137名(予測群)から予測式を作成し, 予測式に関与していない2005年度の患者112名(検証群)から的中率を求め式の妥当性を検討した. 目的変数を退院時自立歩行の有無とし, FIM項目の歩行6点以上を自立歩行と定義した. 説明変数を年齢, リハビリ開始時の意識レベル(GCS合計点), FIM各項目の得点, SIAS運動機能各項目の得点とした. <BR>【結果】<BR> 多重ロジスティック回帰分析の結果, 説明変数として年齢(70歳以上), トイレ移乗(4点以上), 記憶(4点以上), 下肢近位テスト(3点以上)が選択された. 年齢69歳以下,トイレ移乗4点以上, 記憶4点以上, 下肢近位テスト3点以上では90.4%の確率で歩行可能, 年齢70歳以上, トイレ移乗3以下, 記憶3以下, 下肢近位テスト2点以下では0.4%の確率で歩行可能であり, 予測群の的中率は86.6%, 検証群の的中率は85.3%であった. <BR>【考察】<BR> リハビリ開始時に客観的データ(確率)を用いて患者に歩行予後予測の結果を説明することはインフォームドコンセントの面でも有用であり、治療効果判定にも役立つ. 今回の結果から急性期での歩行予後予測は, 年齢, FIM運動1項目, 認知1項目, SIAS下肢運動機能1項目からある程度予測可能であった. 今後はさらに精度を上げるため項目を再検討し, より信頼性, 妥当性の高い急性期脳卒中リハの帰結予測モデルを作成していきたい.