隈本 力, 富沢 賢治, 花岡 裕, 戸田 重夫, 的場 周一郎, 黒柳 洋弥
日本臨床外科学会雑誌 75(4) 1071-1075 2014年4月
症例は44歳の男性で,下部消化管内視鏡検査で下部直腸に粘膜下腫瘍を認め,内視鏡的粘膜切除が施行された.病理検査で,Carcinoid,pSM,垂直断端陽性であり,追加切除目的で当院紹介となった.術前画像検査では異常は認めなかった.術中所見で膀胱直腸窩腹膜に限局的な黄白色の小結節の集簇を認め,術中迅速病理検査で,高分化型乳頭状中皮腫(well-differentiated papillary mesothelioma:以下WDPM)疑いと診断された.小結節は限局していたため,膀胱直腸窩の腹膜を一括切除し,その後,予定通りに腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.永久病理検査では,腹膜切除検体はWDPMの診断であり,直腸検体は切除断端陰性であった.WDPMはまれな低悪性度の腫瘍とされ,多くは術中に偶然発見される.本邦での報告は少なく,限局したWDPMに対して腹腔鏡下に完全切除しえた報告はない.(著者抄録)