水谷 昭衛, 田中 郁子, 片山 雅夫, 大島 久二, 小松 八千代, 浅野 眞一, 加藤 浩二, 松村 仁, 石井 敬祐, 見山 仁美, 永井 朋人, 加藤 賢一, 深谷 修作, 吉田 俊治, 長谷川 みどり, 川島 司郎, 鳥飼 勝隆
リウマチ 40(5) 828-832 2000年11月
57歳女.微熱,多発関節痛,レイノー現象が出現したため来院し,両手指および前腕の皮膚硬化,ごく軽度の両下肺野の肺線維症から強皮症と診断された.少量のステロイド薬で経過観察されていたが,6ヵ月後に全身倦怠感,血痰,腎機能障害を認め入院となった.入院時,血圧は正常であり,尿検査では蛋白・潜血・円柱陽性で,血液検査では貧血,BUN・クレアチニン値の上昇を認め,免疫学検査では抗核抗体陽性であったが,抗Scl-70抗体をはじめ抗ENA抗体は陰性であった.血漿レニン,アルドステロン値は正常範囲であった.ミエロペルオキシダーゼに対する抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)は1000EU以上と上昇しており,腎生検の結果,半月体形成性腎炎と診断した.ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1gを3日間)を施行し,後療法としてプレドニゾロン 60mg/日の投与を行った結果,MPO-ANCAは著明に減少し,腎機能も改善した.強皮症とMPO-ANCA関連腎炎の発症を考える上で興味深い症例と考え報告した