廣 純一郎, 松本 好市, 三木 誓雄, 楠 正人
三重医学 49(3〜4) 53-56 2006年3月
症例は32歳女性.昼食2時間後に突然,臍周囲の腹痛が出現し,当院内科紹介入院,腹部所見で,臍周囲に軽度圧痛を認め,腹部CT検査にて限局性の小腸拡張を認めたが,鎮痛剤にて症状軽減し,経過観察となった.腹痛出現後から10時間後,腹痛の増悪,嘔吐,腹膜刺激症状が出現し外科紹介.急性腹症,絞扼性腸閉塞と診断し,症状出現より12時間後,緊急手術施行.回腸末端部分より70cmの小腸が反時計周りに720度捻転し,壊死を認めた.壊死部分を含めた,回盲部切除術,端々吻合を施行.腹部に,癒着,腫瘍,憩室,解剖学的異常は認めず,原発性小腸軸捻転症と診断した.成人における原発性小腸捻転症は稀で,広範な小腸壊死から,致命的な経過をとる場合もある.急性腹症や,開腹歴のない腸閉塞症例では,腹部CT検査でのWhirl signなど,本症の特徴的所見を念頭に入れ,早期診断,治療を行うことが重要であると考えられた(著者抄録)