趙 岳人

災害支援活動に従事した看護職は、身体的・精神的・社会的に負の影響を受けると考えられる。本研究の目的は、災害支援活動に従事した看護職が受けた身体的・精神的・社会的影響について文献レビューにより明らかにすることである。検索キーワードは、「災害医療」、「看護職(保健師・助産師・看護師・准看護師)」、「身体的影響」、「精神的影響」、「社会的影響」を組み合わせ、医中誌web、CiNii、PubMedで論文検索を行った。2,092件が抽出され、最終的に21件を分析対象とした。分析の結果、以下のことが明らかとなった。災害支援活動に従事した看護職が受けた身体的影響は、休息が十分取れないことによる身体の不調であった。精神的影響は、被災者から感情をぶつけられる精神的な負担であった。社会的影響は、家族と看護職としての自分との間で板挟みになったことであった。(著者抄録)

＜Key Point＞・再発防止を念頭に置いた復職支援をおこなう・就労を想定した生活リズムの構築をうながす・明日からでもすぐに働ける状態にあるかを訊ねる(著者抄録)

慢性期統合失調症患者の口腔保健状態が悪いのは、抗精神病薬もしくはbiperidenの内服治療が一因と考えられる。本研究の目的は入院中の慢性期統合失調症患者の口腔保健状態と抗精神病薬およびbiperiden内服状況との関係性を明らかにすることである。調査対象者は、歯科を有するA精神科病院に入院中の40歳以上の慢性期統合失調症患者167名のうち同意が得られた89名であった。評価指標は、The Global Assessment of Functioning(GAF)、chlorpromazine(CP)およびbiperiden(BP)換算による内服量、口腔粘膜湿潤度、Eilers Oral Assessment Guideによる口腔保健状態およびアイヒナー分類、現在歯数を用いた。統計手法は、記述統計量、対応のないt検定、χ2の独立性の検定、Fisherの直接確率検定、調整済み残渣であった。43名(48.3%)が現在歯数20本以下、64名(71.9%)が咬合支持域不良で、口腔保健状態が悪いことが示唆された。しかし調査対象者の口腔保健状態とCP換算量およびBP換算量には関係性を認めなかった。(著者抄録)

<p>In many countries, the rate of aging in their populations is rapidly increasing. We expect the number of patients with amyotrophic lateral sclerosis (ALS) in bedridden state to increase. The patients are restricted in many aspects of their daily lives, including limited vision to the outside world except only what they can see from the inside of their rooms. This paper proposes an unmanned aerial vehicle (UAV) system using an eye-tracking device for ALS patients in order to improve their quality of life (QOL). This system consists of a UAV, a control screen, an eye-tracking device, a computer, and a transmitter. The UAV has a camera and the camera images are displayed on a control screen. The patient's gaze position is detected by the eye-tracking device. By using this system, the patient will be able to control the UAV by moving his/her eyes while he/she looks at the camera images on the control screen. Firstly, we explain the research background. Secondly, we describe the overview of the UAV system. Thirdly, we explain the design method of the control screen considering field of vision, eye movements, and eye strain in order to reduce operational errors. Finally, we present experimental results to verify the effectiveness of this system and the control screen.</p>

ICD-10国際疾病分類により、統合失調症と診断された成人患者47例(平均年齢50.9±11.0歳)を対象として、二種類の第二世代抗精神病薬(SGA)持効性注射剤(LAI)を中臀筋に投与した。LAIは28例にリスペリドン(リスペリドン群)、19例にアリピプラゾール(アリピプラゾール群)が投与され、超音波検査により筋肉内の輝度評価を行った。その結果、全例に良好なBモード像から筋内LAIでエコー輝度増加が示され、グレイスケール画像における中央値(GSM)解析では、LAI注射筋で数値が有意に上昇し、平均エコー輝度においても注射後の方が有意に高値が示された。また、年齢と平均輝度間における弱い正の相関関係が示され、注射前後のΔGSMでは年齢と共に有意に減少し、リスペリドン群のΔGSMは、アリピプラゾール群に比べ、有意に高値であることが明らかにされた。

第二世代の抗精神薬持効性注射製剤(SG-LAI)リスペリドン(RLAI)、パリペリドン(PLAI)、アリピプラゾール(ALAI)による筋注療法を受けている統合失調症患者3例を対象とし、筋肉内SG-LAIの拡散状態について、超音波Bモード法による観察を行った。SG-LAI投与前後に関心領域(ROI)における筋組織エコー輝度の変化について、グレースケールヒストグラムを用いて検討したところ、各々のSG-LAIは音響陰影を伴う高エコー輝度塊として描出され、全例に筋肉内ROIにおけるグレースケールヒストグラムの増加が認められた。また、各薬剤により輝度変化の有意差が認められたことから、これは各薬剤の化学構造の特性にいる違いと考えられ、客観的証拠を提供するには、超音波像によるSG-LAIの拡散状態の時間経過が重要であることが明示された。

現在の日本において、病気や障害をもつ人を「一個人として尊重し」「平等にあつかい」「慈しみ・思いやりをもって接する」ことは、技術・エビデンス以前の大前提として、精神科に限らずあらゆる分野で医療者共通の理念になっている。ところが、近年、統合失調症をもつ人びとと接する現場には、『平均的な医師は患者との治療同盟をめざす関わりを持とうとしていないのではないか』という警鐘が鳴り響いている。心理社会的アプローチ・精神障害リハビリテーション・精神科薬物療法など、包括的な統合失調症治療において、対話を通じて良好な治療関係を築くことの重要性について考える。(著者抄録)

Long-acting injectionは薬剤投与後、数週間にわたり緩徐に血中に移行するため、確実に筋肉内へ薬液を注入する必要がある。そのためには、筋肉注射部位の皮下脂肪厚を正確にアセスメントする必要がある。しかし、その方法は未だ確立されていない。本研究では、臀部筋肉注射部位の超音波診断装置で測定した「表皮から筋膜下までの距離:DEUF」を従属変数、独立変数に身長、体重、体組成計で測定した脂肪率・筋肉量・Body Mass Index(BMI)、ノギスで測定した臀部筋肉注射部位の皮下脂肪の厚みの1/2の値(ノギス値)を用いて「臀部注射部位の皮下脂肪厚」を推定できるか検討した。重回帰分析の結果、BMI以外の下肢の左右の脂肪率、ノギスの値が説明変数として有用であった。統合失調症患者の臀部筋肉注射部位の皮下脂肪厚は、ノギスの値と体組成計で測定した下肢の脂肪率を併用することでより簡便で正確な値が推定できると考えられた。(著者抄録)

非定型LAI(持効性抗精神病薬注射剤)の登場により、従来の定型LAIを含むLAI治療の有用性が見直され、服薬中断による再燃・再発の防止、病状安定によるQOL向上効果が期待されている。しかし、筋肉注射には薬物による副反応と手技不良による血管や神経の損傷という課題がある。本報告では超音波診断法を用いて症例を観察した。症例1は定型LAI投与部位で表皮から約15.0mmの筋膜下に硬結が確認された。症例2は非定型LAI投与部位周囲で硬結が確認された。症例3は注射針刺入時に血液の逆流がみられた症例で、臀部筋肉注射部位付近の表皮から39.5mmの部位に動脈性の拍動が確認された。注射部位の正確な特定と皮下脂肪厚の正確なアセスメントは、血管創傷と注射部位反応の予防のために重要である。予防策として、同一部位への刺入回避、刺入深度と角度の考慮も重要であり、超音波診断法、注射手技のセミナーや実技指導を行うのも一法であると考えられた。(著者抄録)

A recent meta-analysis showed that long-acting injectable (LAI) antipsychotics were not superior to oral antipsychotics for preventing relapse in patients with -schizophrenia. We therefore designed a treatment strategy combining risperidone LAI and COMPASS -(COMprehensive Psycho-educational Approach and Scheme Set), an original psychoeducational program supporting treatment with risperidone LAI and evaluating subjective treatment satisfaction, transition of symptoms, and effectiveness in preventing symptomatic relapse. The aim of this study was to examine whether addition of COMPASS to risperidone LAI was more effective in preventing relapse in schizophrenia patients than risperidone LAI alone, with the latter group consisting of patients enrolled in a Phase III trial of risperidone LAI in Japan. Patients were followed up for 6 months, with COMPASS continuously implemented from the transition to the observation phase. The primary efficacy measurements were relapse rate (rates of rehospitalization and discontinuation due to inefficacy). Secondary efficacy measurements were the Brief Psychiatric Rating Scale (BPRS) and Global Assessment of Functioning (GAF) scores. Of the 96 patients originally enrolled, 19 (19.8%) were discontinued from all causes. During the 6-month study period, ten of the 96 patients (10.4%) relapsed, compared with a 12.2% relapse rate in patients enrolled in a Phase III trial of risperidone LAI in Japan. Patients showed significant improvements in BPRS total scores (P = 0.0031), BPRS positive (P = 0.0451), BRPS negative (P, 0.0001), and general subscale scores (P = 0.0031), and GAF (P, 0.0001) from baseline to 6 months. In conclusion, the lower relapse rate observed in patients treated with COMPASS plus risperidone LAI than in patients treated with risperidone LAI alone suggests that -COMPASS may have benefits in the treatment of schizophrenia, indicating a need for randomized, controlled trials in larger numbers of patients.

統合失調症患者の服薬アドヒアランスを正しく把握するために、多施設(1大学および6精神科病院)共同により50例の患者を対象として、日本で初めてMEMS(Medication Event Monitoring System)を用いた服薬継続性の検討を行った。退院時点から6ヵ月間の服薬状況をMEMSにより持続的に測定し、服薬遵守率とその傾向について調査した。服薬良好群(調査期間における総服薬率75%以上)は全体の64%、服薬不良群(総服薬率75%未満は12%であり、24%が調査期間中に脱落した。服薬率の低下が特に目立つのは、退院直後の1週間から1ヵ月にかけてであり、この時点ですでに20%の対象者が服薬遵守不良を示した。また、服薬不良群においては、定められた服薬時間からのズレが大きく、日ごとのばらつき具合も大きいことがわかった。アドヒアランスを維持するためには、退院直後から当事者への積極的な関わりやさまざまな工夫をチーム医療の現場で重ねていくことが重要であることが示唆された。(著者抄録)