小寺 泰弘, 山村 義孝, 稲田 健一, 清水 泰博, 鳥井 彰人, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 紀藤 毅
日本臨床外科医学会雑誌 58(8), 1712-1716(8) 1712-1716 1997年
過去30年間に切除した胃筋原性腫瘍41例を対象とし,その治療方針,術式について検討した.今回検討した範囲でリンパ節転移例は1例も認めず,術式の違いによる生存曲線の差もないことから,良悪性を問わず,胃の切除範囲は適切な局所切除で充分と思われた.ただし,腫瘍の取り残し,損傷は確実に再発につながることを念頭において切除を行うべきである.一方,切除標本をもってしてもHE染色による検討のみでは良悪性の鑑別すら困難であり, 10例において切除当時と今回検索時の病理組織学的診断が食い違った.よって,良悪性の術前診断に基づく治療方針の選択にこだわるよりも,術前には悪性のリスクのある症例を洩れなく拾い出す基準を確立すること,術後は予後因子として有用な分子生物学的パラメーターを求めることを今後の課題とすべきと考える.