前田 耕太郎, 橋本 光正, 村山 良彦, 佐野 真, 片井 均, 酒井 章次, 洪 淳一, 山本 修美, 細田 洋一郎, 西野 るり子, 掘部 良宗, 小林 正弘
日本大腸肛門病学会雑誌 45(6) 884-889 1992年
肛門,外陰におよぶ会陰部に発生したボーエン癌の1例を報告し,治療について考察した.症例は,59歳の女性で,1年前よりの会陰部腫瘤を主訴にて受診した.会陰部には,肛門,外陰に及ぶ5.3×2.6cmの湿疹様病変と,肛門後方の3.7×3.4cmの湿疹様病変が不連続に認められ,肛門管には病変はみられなかった.広範囲局所切除と両鼠径リンパ節のサンプリングを行い,組織学的には,ボーエン病に伴う,最深3.5mmまで浸潤した分化型扁平上皮癌がみられ,リンパ節転移は認めなかった.これまで肛門癌,外陰癌の治療方針は,大きさ2cmを基準に機能温存手術が適応とされていたが,ボーエン癌の治療においては,広範囲局所切除術を基本とし,ボーエン癌を伴わない肛門癌や外陰癌の治療方針とは異なり,病変の大きさより,むしろ深達度や癌の分化度を考慮して術式の選択を行って良いのではないかと考察された.