全並 賢二, 住友 誠, 白木 良一
Japanese Journal of Endourology 34(1) 12-18 2021年4月
ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)は低侵襲性と安定した手術操作性から欧米を中心に普及してきた.日本でも2018年に保険収載されたことにより症例の増加が今後期待されるが,術式や手技の標準化,安定化という観点ではまだ未成熟であり,課題がある.特に,尿路変向の選択,実際の手技においては確立されておらず,ICUD(intracorporeal urinary diversion)はその煩雑性から敬遠され,これまでの手技をそのまま応用しやすいECUD(extracorporeal urinary diversion)を採用している施設が多いのが現状である.ICUDの利点として,創部を最小にすることによる侵襲,疼痛,創部感染の軽減,腸管を外気に曝露させないないことによる腸管浮腫,体液ロス,腸管合併症の軽減が期待できる.また,尿管を創外に引き出す必要がないため,無理な牽引による術後尿管狭窄の減少が期待でき,ロボット操作による比較的容易な尿管導管吻合が可能になる利点も挙げられる.しかし,腸管操作中の触覚がないことや,手術時間が長くなりやすいことから,上記の利点が得られない可能性も懸念されるため,手術手技の標準化,手術時間の短縮,early recovery after surgery(ERAS) protocolを含めた周術期管理が重要と考えられる.本稿では,ICUD新規導入施設への足掛かりとなるべく,当科でのICUD導入や確立に対する工夫や注意点について解説する.(著者抄録)