丸野内暢彦, 榊原敏正, 大熊真人, 宮地栄一, 鳥羽慎也, 秋山秀彦, 丸野内てい, 山本ひろ子
藤田学園医学会誌 27(2) 193-200 2003年12月18日
骨髄間質細胞(MSC)の分化誘導において,神経細胞としての性質を備え,より長く分化形態が維持できる試薬や培地など実験方法の改良を試みた.実験には,成人胸骨より採取した骨髄を20%ウシ胎児血清(FBS)を含むαMEN培地にて培養,3〜4代継代して得られた基質接着性のヒト骨髄間質細胞(hMSC)を用いた.分化誘導の前処理以降のFBSの使用を止め,神経培養用に調製されたneuro-basal mediumを導入した結果,70%以上の細胞が約10日間とより長期間にわたり分化後の形態を維持することができた.また,分化後3〜4日以上経過した細胞をFBSを含む培地に戻しても,MSCの形質に変化することはなかった.次に,分化誘導により得られた細胞について,免疫染色,RT-PCR,電気生理学的実験にて性質の解析を行った結果,hMSCは適切な処置によって形態のみならず,遺伝子レベルでも,また,電気生理学的にも神経細胞の性質を備えた細胞へ分化可能であることが明らかとなった