渡辺 宏久

欧米とわが国を含むアジア圏では家族性前頭側頭型認知症(FTD)の頻度やその背景となる遺伝子変異が大きく異なるため、FTDの治療薬開発に向けた基礎資料を作成するためには、わが国におけるFTDの臨床像を把握することが必要である。そこで行動異常型前頭側頭型認知症(bvFTD)と意味性認知症(SD)を対象としたコホート研究「日本人前頭側頭葉変性症の自然歴・生体試料レジストリと病態抑止治療開発フロンティア(FTLD-J)」が開始され、症例の収集が進められている。FTLD-Jでは、FTD診療に精通した全国の脳神経内科医と精神科医による協力のもと、現時点までに110例の臨床情報を収集した。収集された臨床情報の結果から、65歳以降に発症する高齢発症例が30%存在すること、指定難病の基準に達しない軽度例が20%程度存在することなど、FTDには多様な臨床像が認められることが示唆された。(著者抄録)

＜Points＞▼パーキンソニズムの発現に最も関わっているのは黒質緻密層の神経細胞の脱落であり、それに伴う線条体におけるドパミンの低下である。▼ウェアリングオフは、ドパミン神経細胞の脱落進行を反映すると考えられている。▼ジスキネジアは、L-ドパによるパルス状の刺激が加わることで、大脳皮質-基底核ループの変調を来すことが原因と考えられている。▼多彩な非運動症状は、パーキンソン病が全身性の疾患であることを意味する。(著者抄録)

Misfolded and aggregated tau and amyloid β (Aβ) proteins are the pathological hallmarks of Alzheimer's disease (AD). These aberrant proteins lose their physiological roles, acquire neurotoxicity, and propagate across neural systems. Despite the growing understanding of the molecular pathophysiology, the relationship among molecular alterations, pathological changes, and dementia onset and progression remain to be elucidated. Connectivity is an exclusive characteristic of the brain, and the integrity and segregation of the functional and anatomical networks are crucial for normal functioning. Interestingly, a lot of magnetic resonance imaging (MRI) studies have demonstrated successive structural and functional disconnection among brain regions supporting the idea that AD is a disconnection syndrome. Recent several studies using the combination of cutting-edge Aβ and tau PET tracers integrated by data-driven statistical methods, resting-state functional MRI, and diffusion tensor imaging have shed light on the spatial distribution pattern of tau retention as well the relationship between tau retention and functional/structural network disruption in AD. Regional retention of tau PET traces is associated with gray matter changes, structural network disruption, and cognitive function tests. The tau retention will mainly spread along with cognition-related resting state networks and be more common in the network hubs which exhibit many strong interconnections with other regions within the network as well as without the networks. Mainly, precuneus and posterior cingulate gyrus are commonly involved and can be the critical nodes associated with clinically manifested dementia from the normal cognitive state.

＜文献概要＞はじめに 首下がり症候群は,体幹に比して頸部が異常に前屈した状態を呈する疾患群を指す(図1).高橋は,「いくつかの基礎疾患に伴ってみられる症候としての首下がり」を首下がり症候群とした.首下がり症候群は,神経筋疾患が原因となる場合,神経変性疾患が原因となる場合,さらには脊椎・脊髄病変が原因となる場合に大別される(図1).一方,"首下がり"は,神経学用語集改訂第3版において,「三浦謹之助が詳述した項部筋不全麻痺による首下がりを主徴とする病態.当初地方病[Gerlier病]とされたが諸原因による」との記載がある.三浦の報告した「Kubisagari」で認めた頸部の前屈は,発作性,麻痺性,再発性で,しばしば家族性であるなど,現在,われわれが診療している首下がり症候群とは臨床像が大きく異なる.このため,目崎は,その総説の中で,dropped headを首下がりと訳すことに対して異を唱えている.この過度の頸部の前屈が,錐体外路疾患において注目されるようになったのは比較的最近であり,用語についてもその成因をジストニアと考えたことに由来するdisproportionate anterocollisや,筋力低下と考えたことに由来するdropped head syndrome(首下がり症候群)が用いられてきた.本レビューでは,錐体外路疾患におけるdisproportionate anterocollis(antecollis)・首下がり症候群の病態,分類,治療について整理したい.

国際パーキンソン病・運動障害学会は,診断過程を体系化し,パーキンソン症状,絶対的除外基準,相対的除外基準,支持的基準から成り立つパーキンソン病(PD)診断基準を2015年に提唱した。新規観点として,非運動症状,補助的診断検査が入った。発症早期の認知症は,除外基準ではない。相対的除外基準にはPD以外の疾患を示唆するが,PD確定診断例で認め得る10項目が含まれ,支持的基準とのバランスで診断が決まる。(著者抄録)