西和歌子, 岩田洋平, 有馬豪, 西村景子, 奥本隆行, 吉村陽子, 松永佳世子
西日本皮膚科 別冊 77(1) 51-54 2015年2月 査読有り
患者は47歳女性,多発性硬化症による第4胸椎以下の神経障害があり,数年前より車椅子生活であった。2011年3月より左坐骨結節部に褥瘡が生じたが放置していた。3月下旬より38度台の発熱が生じ,解熱しないため,当科を受診した。初診時,左坐骨結節部の褥瘡部に壊死組織を認め,CTでは左臀部から左下腿にかけて皮下深部組織内にガス像を認めガス壊疸と診断した。創部からの細菌培養ではEnterococccus avium,Lactbacillus spが検出された。抗生剤の全身投与を開始したが,第3病日に意識障害を来したため,第4病日に広範囲にデブリードマンを行い,感染の沈静化を得ることができ救命することができた。デブリードマン部の欠損は,複数回の植皮術を行い上皮化した。坐骨部褥瘡は,各種外用剤による保存的治療,局所陰圧閉鎖療法(VAC療法)を約5ヵ月間にわたり試みるも治癒しなかった。そのため左坐骨突出部の削除を含めたデブリードマンと大臀筋皮弁形成術を行うことで退院が可能となった。(著者抄録)