池田 匡志, 北島 剛司, 岩田 仲生, 尾崎 紀夫
日本神経精神薬理学雑誌, 22(5) 137-143, Oct, 2002
近年の分子遺伝学の進歩と共に,気分障害は遺伝子レベルから病態生理に接近する研究が行われている.方法論はpositional approach(連鎖研究など),candidate gene approach(関連研究など)に二大別され,いくつかの有力な知見が得られつつある.連鎖研究では1q21-42,4p16,10q21-26,11p15,12q23-24,13q11-32,18p11,18q21-22,22q11-13,Xp11,Xq24-28などが複数の陽性結果を得ている部位である.しかし,連鎖解析は検出力の問題などが指摘されており,現在では関連研究による形質マッピングが注目されている.関連研究の候補遺伝子としては主に神経伝達物質に焦点があてられており,セロトニントランスポーター,セロトニン受容体,ドパミン受容体,チロシン水酸化酵素,MAO-A,COMT,トリプトファン水酸化酵素等の遺伝子で多く研究がなされている