加藤昌弘, 世古留美, 川戸美由紀, 橋本修二, 林正幸, 渡辺晃紀, 野田龍也, 尾島俊之, 辻一郎
厚生の指標 57(4) 14-19 2010年4月 査読有り
目的 健康増進計画の目標評価項目の1つに挙げられている65歳平均自立期間について,愛知県の国民健康保険各保険者において算定を行い,そのばらつきと人口規模との関係,利用する死亡資料の期間の違いについて検討を行った。方法 愛知県の国民健康保険団体連合会を構成する58保険者(32市,25町村および1事務組合)を対象として,対象地域の人口,死亡者数および介護保険法に基づく要介護度II~Vの認定者数を用いて,2005年の保険者別,男女別の65歳平均自立期間とその95%信頼区間を算定した。ただし,算定にあたっては,人口および死亡者数を2005年の1年間(以下,1年間)利用したものと2004~2006年の3年間(以下,3年間)利用の2通り行った。結果 資料を1年間利用した場合の2005年の65歳平均自立期間推定値の平均値は,男16.91±1.08年,女20.03±1.02年であり,男女とも対象の人口規模に応じかなりのばらつきが認められた。1年間利用と3年間利用した場合の比較では,男女とも各推定値のばらつきは3年間利用の方が小さかった。また,1年間利用と3年間利用した場合の各推計値は,男女とも正の相関を示し,相関係数は男が0.78,女が0.84であった。死亡資料を1年間利用した場合における平均自立期間の各推定値の95%信頼区間の幅は,一定条件下で1年間の死亡資料に基づき人口規模に応じて試算をした95%信頼区間の幅に,男女ともほぼ一致をした。このことから,平均自立期間の推定値のばらつきの大よその大きさは,全国資料に基づく試算値で見積もることが可能であることが示唆された。結論 要介護認定者数に基づく平均自立期間は,人口規模の小さい地域での適用が可能であり有用であると考えられた。ただし,人口規模が小さい地域においては,3年間の人口および死亡者数を利用することや,平均自立期間の推定値に併せて,その95%信頼区間を明示することが望ましいと考えられた。(著者抄録)