植村 晃久, 森本 紳一郎, 平光 伸也, 山田 健二, 久保 奈津子, 安井 直, 加藤 千雄, 菱田 仁, 池田 信男, 水野 康
心臓 23(10), 1147-1153(10) 1147-1153 1991年
49歳女性で,労作時に胸部不快感,眼前暗黒感を自覚.ホルター心電図にて終始III度房室ブロックが認められ,精査目的にて入院.血液・生化学検査では,炎症所見は陰性で,特に異常は認められなかった.電気生理学的検査で,AH時間は310msec以上に延長し,AH間の伝導障害による高度房室ブロックであることが示されたが,ヒス東内ブロックの可能性も残された.心胸郭比は0.52からO.56へと徐々に心拡大はすすんだが,ペースメーカー植え込みにて心胸郭比は0.50へと改善した.右室心内膜心筋生検では,心筋細胞の軽度の肥大と配列の乱れ,心筋間質の線維化とリンパ球の明らかな浸潤が認められ,心筋炎と診断した.しかし,小児期にジフテリアに罹患しており,この心筋炎がジフテリアによるものか,あるいは不顕性のウイルス性か,病因に関し結論は得られなかった.しかし心筋炎の存在そのものに関しては組織像より疑う余地がなく,完全房室ブロックに心筋炎が関与していることが考えられた.