樋口 彰宏, 中井 秀郎, 宮里 実, 泉谷 正伸, 宍戸 清一郎, 川村 猛
日本泌尿器科学会雑誌 87(10) 1145-1150 1996年10月20日
(背景と目的) 間欠性水腎症は診断が難しく, 手術適応の決定も難しい. その特徴を明からかにするため23例に対し検討を行った.<br>(対象と方法) 1978年から1995年までに間欠性水腎症と診断された23例について, その臨床的特徴と治療成績について検討を加えた.<br>(結果) 年齢は平均6歳で男児21例, 女児2例. 主訴は側腹部痛を主とした疼痛で患側は左側21例, 右側1例, 両側1例であった. 随伴症状として肉眼的血尿が7例 (30%) に, 嘔吐が9例 (39%) に認められた. 非疝痛発作時のIVPでは, ほぼ全例に患側腎盂の軽度拡張と, 腎盂尿管移行部での尿管の蛇行が認められた. 分腎機能検査では, 1例に患側の著明な腎機能障害を認めた以外, 患側と健側での差のない結果であった. 側腹部疝痛発作時の腎盂の拡張が超音波検査にて証明されたものを手術適応とし, 17例 (74%) に手術が行われた. 手術術式は腎盂形成術 (Anderson-Hynes) が14例, aberrant vessel の切除が1例, 腎盂壁による aberrant vessel の包埋術 (Hellstrom) が1例, 腎摘除術が1例であった. その手術所見と摘出標本から間欠性水腎症という病態の原疾患は, 腎盂尿管移行部の内因性狭窄が10例, aberrant vessel による尿管の圧迫が4例, 尿管ポリープが3例 (内1例は両側) であった.<br>(結論) 術後症状の再発を見た症例がないこと, 手術に至った経緯として, 突然非可逆的な水腎症変化を来したと思われる2例と, 徐々に水腎症変化が進行していった1例, および高度腎機能障害を呈した1例を経験したことから, 間欠性水腎症は注意深い経過観察が必要であり, 手術が有効な治療法であると思われた.