市野 学, 佐々木 ひと美, 日下 守, 三島 淳二, 桑原 勝孝, 石川 清仁, 白木 良一, 星長 清隆, 内村 正史, 荒木 恒敏
腎移植・血管外科 16(1) 68-71 2004年12月
36歳男.9年前に巣状糸球体硬化症による慢性腎不全のため献腎移植を受けており,今回,突然の右背部痛と呼吸困難が出現した.胸部レントゲン写真,胸部CTで右胸水の貯留を認め,胸腔ドレナージで胸水は茶褐色であった.食道破裂を疑い上部消化管造影,および内視鏡を行ったところ,下部食道に食道破裂を認めた.開胸すると下部食道前壁と右胸膜に穿孔がみられ,食道穿孔部を縫合し,胃瘻と腸瘻を増設して手術を終了した.術後11病日に食道の縫合不全とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による膿胸が出現した.抗生物質およびテイコプラニンによる治療により胸水の減少,呼吸困難の改善を認めた.血清クレアチニン値は術後,一時4.3mg/dlまで上昇したが,退院前には食道破裂発症直前レベル以下の2.3mg/dlにまで回復した.退院後20ヵ月が経過したが,再発は認められない