坂倉 早紀, 結城 賢弥, 太田 友香, 村田 栄弥子, 小崎 里華, 小崎 健次郎, 武藤 香織, 沼部 博直, 山縣 然太朗, 坪田 一男
日本眼科学会雑誌 126(9) 760-771 2022年9月
背景:Hallermann-Streiff症候群(HSS)は,特徴的顔貌(短頭,薄い口唇,小さな鼻),歯牙異常,低身長,薄い毛髪,皮膚萎縮,両側小眼球症,先天白内障の7つの特徴的な所見を有する稀少な先天性疾患である.全世界で約200例しか報告がなく,先天白内障,両側小眼球症に加えて,緑内障や水疱性角膜症などの眼合併症を有する成人例の報告は少ない.我々は成人例におけるHSSの眼所見を報告し,主に緑内障の管理について検討した.症例:対象は成人のHSS 4例であり,性別は全例女性,年齢は26~50歳であった.4例中2例で7つの特徴すべてを有していた.矯正視力は30cm指数弁~0.3,眼圧は4~20mmHg,眼軸長は15.47~18.70mm,角膜内皮細胞密度は測定不能~2,492cells/mm2であった.3例5眼に緑内障,2例3眼に水疱性角膜症を認めた.1例の水疱性角膜症に対して全層角膜移植術が施行されており,その後,続発緑内障を発症し,線維柱帯切除術後に眼球ろうを来した.結論:成人のHSSでは,緑内障や水疱性角膜症を発症し視力予後が不良となる可能性が示唆された.HSS患者の緑内障や水疱性角膜症に対する手術治療の術式および時期については,慎重な検討が必要である.(著者抄録)