谷道 由美子, 矢越 美智子, 矢内 充, 上原 由紀, 細川 直登, 下口 和雄, 山田 ヒロ子, 大底 睦子, 山本 幸代, 熊坂 一成
日本臨床微生物学雑誌 18(4) 245-251 2008年12月
筆者らは血液培養の培養陽性率を向上させるため,2001年から異なる2ヶ所の部位からの採血法(2セット採血)の実施を推奨してきた。その結果,2004年には2セット採血の実施率が59.0%になった。2002年1月から2004年12月までの3年間のデータを調査した結果,菌陽性率は2セット採血22.1%,1セット採血14.0%となった。検出された菌群のうち,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌群(CNS),腸内細菌科グラム陰性桿菌群(腸内細菌群),Bacillus属,およびブドウ非発酵グラム陰性桿菌群(非発酵菌群)において培養陽性率に有意差が認められた(χ2検定,p<0.01)。菌検出時,起因菌の可能性が極めて高い腸内細菌群,非発酵菌群,黄色ブドウ球菌では2ヶ所の採血部位のうち1ヶ所のみから検出された症例が,それぞれ31.3%,41.9%,21.4%に認められた。この結果は,1セット採血ではこれらの菌を検出できない可能性があり,2セット採血を実施することが明らかに起因菌の陽性率向上につながることを示した。一方,検出菌の80%が採血時の汚染であるといわれているCNSについては,2ヶ所の採血部位のうち1ヶ所のみから検出された症例が74.3%に認められ,汚染菌の可能性が高いと考えられた。採血時に汚染菌として混入する可能性が高い菌群は2セット採血を実施することでさらに汚染率を上げる結果にはなるが,起因菌としての判断はボトルの陽性本数に依存するといわれているように,陽性となったボトルの本数が起因菌か汚染菌かの判断の手助けとなると考えられた。(著者抄録)