基本情報
- 所属
- 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医保健看護学科 応用部門 病態病理学研究分野 准教授
- 学位
- 博士(獣医学)(日本獣医生命科学大学)
- J-GLOBAL ID
- 200901036410736384
- researchmap会員ID
- 6000014246
- 外部リンク
JCVP認定獣医病理学専門家
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●奄美群島の稀少な野生動物死亡例の病理学的研究 2017年~現在
奄美群島の動物病院の先生方などからのご依頼により、アマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどの稀少な野生動物が死亡しているのが見つかった場合や、傷病で保護後に治療の甲斐なく死亡した場合に、その死因について病理学的に調査しています。これにより野生下で危険な伝染病が発生していないかのモニタリングや、今後の保護個体の治療法の改善に役立てています。
・J Comp Pathol. 2023 Accept.
Infective endocarditis with systemic bacterial embolism caused by Staphylococcus aureus in a free-ranging Amami rabbit (Pentalagus furnessi)
M. Konnai, M Yamamoto (co-first author), K. Ito, H. Yamabe, T. E. Kishimoto, H. Aoki, Y. Machida, M. Michishita, M. Haritani, H. Yoshimura.
・Int J Parasitol Parasites Wildl. 2022 18:194-200.
Three new species of Eimeria (Apicomplexa: Eimeriidae) from the Amami rabbit, Pentalagus furnessi (Mammalia: Leporidae)
T. Tokiwa, S. Chou, H. Kitazoe, K. Ito, R. Torimoto, Y. Shoshi, C. Sanjoba, M. Yamamoto, H. Yoshimura.
・Int J Parasitol Parasites Wildl. 2019 9:244-247.
Toxoplasma gondii infection in Amami spiny rat on Amami-Oshima Island, Japan
T. Tokiwa, H. Yoshimura (co-first author), S. Hiruma, Y. Akahori, A. Suzuki, K. Ito, M. Yamamoto, K. Ike.
・Parasitol Int. 2020 76:102058.
Alien parasitic infections in the endangered Ryukyu long-furred rat (Diplothrix legata) on Amami-Oshima Island, Japan
T. Tokiwa, H. Yoshimura, K. Ito, S. Chou, M. Yamamoto.
●動物園飼育下ニホンライチョウに発生する疾病の病理学的研究 2015年~現在
国の特別天然記念物に指定されているニホンライチョウは、地球温暖化などの影響により急激に生息数が減少しています。そこで環境省により保護増殖事業計画が策定され、2015年からニホンライチョウを動物園で飼育・繁殖し、将来的に野生に再導入する試み(生息域外保全)が始まりました。しかし、高山帯の冷涼な環境に生息するニホンライチョウは感染症に弱いなど、飼育を成功させるにはニホンライチョウに発生する疾病を解明する必要があります。当研究室は動物園飼育開始時から本事業に協力し、ニホンライチョウの疾病を病理学的に研究しています。
●イヌの乳腺腫瘍の分子病理学的研究 2010年~現在
雌イヌにおいて発生頻度の高い腫瘍である乳腺腫瘍を研究テーマの一つにしています。近年、ヒト医療では癌に高発現する分子を狙い撃ちにする分子標的治療法が発展しています。イヌの乳腺腫瘍においても、癌の進行に重要な役割を果たし、治療標的になり得る候補分子を探索しています。
S100蛋白の一つであるS100A4は、イヌの正常乳腺や良性の乳腺病変では発現しないにもかかわらず、一部の悪性乳腺腫瘍、特に退形成癌と呼ばれる最も悪性度の高い乳腺腫瘍の亜型において発現がみられました。S100A4を発現するイヌの乳腺癌から新たな培養細胞株NV-CMLを樹立し、RNA干渉技術を用いてS100A4の発現をノックダウンしたところ培養細胞の増殖能や遊走能が低下しました。このことからS100A4がイヌの乳腺癌の増殖や運動機能に関わっており、治療標的分子候補となる可能性が示唆されました。
NestinはVI型中間径フィラメントに分類される細胞骨格蛋白で、神経幹細胞のマーカーとされていました。イヌの乳腺におけるnestinの発現を検討したところ、正常乳腺や良性の乳腺増殖性病変の腺上皮細胞には発現されないにもかかわらず、3割程度の悪性乳腺腫瘍、特に転移や増殖活性が高いなどの高悪性度の性質を持つ乳腺癌の腺上皮細胞には発現していることがわかりました。またnestinの発現は、間葉系マーカーであるvimrntinの発現と相関性を示しました。さらにイヌの乳腺癌培養細胞におけるnestinの発現を、RNA干渉技術によりノックダウンしたところ、nestinの発現が低下した癌細胞は、増殖能や移動能などが低下することが判明しました。このようにnestinがイヌの乳腺癌の悪性挙動の一部に関与している可能性が示唆されました。
・Vet Pathol. 2019 56(3):389-398.
Expression and Roles of S100A4 in Anaplastic Cells of Canine Mammary Carcinomas
H. Yoshimura, A. Otsuka, M. Michishita, M. Yamamoto, M. Ashizawa, M. Zushi, M. Moriya, D. Azakami, K. Ochiai, Y. Matsuda, T. Ishiwata, S. Kamiya, K. Takahashi.
・Vet Pathol. 2021 58(5):994-1003.
Involvement of Nestin in the Progression of Canine Mammary Carcinoma
H. Yoshimura, M. Moriya, A. Yoshida, M. Yamamoto, Y. Machida, K. Ochiai, M. Michishita, T. Nakagawa, Y. Matsuda, K. Takahashi, S. Kamiya, T. Ishiwata.
●イヌの乳腺腫瘍の分類に関する病理学的研究 2010年~現在
1999年のイヌの乳腺腫瘍のWHO分類では、比較的悪性度の高い組織型とされた単純癌(simple carcinoma)は「腺上皮あるいは筋上皮細胞のどちらか一方のみからなる癌」と定義されていました。また腺上皮と筋上皮が混在する腫瘍において、出現する筋上皮成分は異型性をほとんど示さないと考えられていました。しかしその後、腺上皮と筋上皮を免疫染色で鑑別できるいくつかの有用な抗体がみつかり、これまで形態学的に腺上皮と考えられていた異型性の高い細胞の中に、筋上皮由来のものがあることがわかってきていました。
そこで単純癌の一亜型である充実癌(solid carcinoma)と過去に診断されていた72症例を免疫染色結果に基づき再分類したところ、23症例が腺上皮由来の単純性充実癌(真の単純癌)、11症例が筋上皮由来の単純癌(悪性筋上皮腫)、38症例が腺上皮と筋上皮が混在した二相癌であることが判明しました。そして腺上皮由来の単純癌に比べて、筋上皮成分を含む残り二つの型は予後不良を示唆する病理学的指標がはるかに良好でした。このように腺上皮由来の単純性充実癌と筋上皮成分を含む二つの型は、予後を予測するためにも別の分類にする必要があることを提案しました。
これらの成果などにより、現在のイヌの乳腺腫瘍分類では単純癌は「腺上皮のみから成る癌」と定義され、筋上皮のみからなる癌は悪性筋上皮腫に分類されています。また腺上皮と筋上皮の両方に悪性の所見を示す二相性の癌は、癌及び悪性筋上皮腫(carcinoma & malignant myoepithelioma)という分類が設けられています。
・Vet Pathol. 2014 51(6):1090-5.
Differences in indicators of malignancy between luminal epithelial cell type and myoepithelial cell type of simple solid carcinoma in the canine mammary gland
H. Yoshimura, R. Nakahira, T.E. Kishimoto, M. Michishita, K. Ohkusu-Tsukada, K. Takahashi.
●ヒトの膵癌における長鎖ノンコーディングRNAの研究 2012年~2020年
長鎖ノンコーディングRNAは蛋白質をコードしないRNAで、以前は役割を持たないと考えられていましたが、近年様々な機能が発見されて注目されています。最も難治性の癌の一つであるヒトの膵癌の培養細胞において、マイクロアレイにより転移に関係する遺伝子発現を調べたところ、長鎖ノンコーディングRNAの一つであるH19が見出されました。またin situ hybridization法によりヒトの膵癌の臨床検体において、特に高グレードの症例でH19の発現がみられることを確認しました。そこでヒト膵癌培養細胞においてH19の発現を上下させたところ、運動能が変化することがわかりました。さらにH19の発現を低下させた細胞株は、免疫不全マウスに移植しても転移巣形成が著しく少ないことがわかりました。このように長鎖ノンコーディングRNA H19はヒト膵癌の転移に重要な役割を果たしていることが示唆されました。
・Lab Invest. 2018 98(6):814-824.
Reduced expression of the H19 long non-coding RNA inhibits pancreatic cancer metastasis
H. Yoshimura, Y. Matsuda, M. Yamamoto, M. Michishita, K. Takahashi, N. Sasaki, N. Ishikawa, J. Aida, K. Takubo, T. Arai, T. Ishiwata.
・Front Biosci (Landmark Ed). 2018 23:614-625.
Expression and role of long non-coding RNA H19 in carcinogenesis
H. Yoshimura, Y. Matsuda, M. Yamamoto, S. Kamiya, T. Ishiwata.
●ペットのジャンガリアンハムスターの乳腺腫瘍の病理学的検索 2008年~2015年
アニメの人気で日本で飼育数が増えたジャンガリアンハムスターには、しばしば乳腺腫瘍が発生します。病理検査に提出されたジャンガリアンハムスターの乳腺腫瘍45症例を病理組織学的に分類したところ腺腫14例、腺癌18例、脂質産生癌1例、腺扁平上皮癌2例、悪性腺筋上皮腫2例、良性混合腫瘍1例、癌肉腫7例といった多様な亜型に分けられました。特に比較的発生頻度の高かった癌肉腫は、風船様細胞(balloon cell)と名付けた特徴的な大型空胞を有する腫瘍細胞が混じる独特の組織像を呈していました。また上皮成分と間葉成分の間に移行像が認められることから、これらは真の癌肉腫ではなく、上皮間葉転換により生じる腫瘍であることが示唆されました。
・Vet Pathol. 2015 Nov;52(6):1227-34.
Characterization of Spontaneous Mammary Tumors in Domestic Djungarian Hamsters (Phodopus sungorus)
H. Yoshimura, N. Kimura-Tsukada, Y. Ono, M. Michishita, K. Ohkusu-Tsukada, Y. Matsuda, T. Ishiwata, K. Takahashi.
・J Vet Diagn Invest. 2010 22(2):305-9.
Lipid-rich carcinoma in the mammary gland of a Djungarian hamster (Phodopus sungorus)
H. Yoshimura, N. Kimura, R. Nakahira, M. Michishita, K. Ohkusu-Tsukada, K. Takahashi.
●イヌやネコの乳腺腫瘍における癌間質微小環境の研究 2008年~2015年
癌組織は癌細胞だけではなく間質を構成する細胞や細胞外基質が含まれています。近年、癌細胞は正常な細胞である間質細胞に働きかけ、癌細胞と間質細胞の相互作用により癌が進行していくと考えられるようになってきました。特に癌間質の線維芽細胞は癌関連線維芽細胞(cancer associated fibroblasts; CAFs)と呼ばれて、重要視されています。
イヌの乳腺腫瘍におけるCAFsの出現を調べるために、CAFsがα-smooth muscle actin(αSMA)を発現する筋線維芽細胞の性質を示すことを指標に検討したところ、高悪性度の乳腺腫瘍において間質に筋線維芽細胞が有意に多く出現していることがわかりました。またヒトの癌の浸潤に関わるとされる細胞外基質蛋白であるテネイシン-cを免疫染色で調べたところ、イヌの乳腺腫瘍では間質における発現と基底膜における発現の二つのパターンがあり、間質におけるテネイシン-c発現は高悪性度の乳腺癌で有意に多い一方で、基底膜におけるテネイシン-c発現は良性の乳腺腫瘍でもしばしば認められました。二重免疫染色や、免疫染色-in situ hybridization重染色を実施してテネイシン-cの産生細胞を検討したところ、間質のテネイシン-cは筋線維芽細胞が産生していることがわかりました。このようにイヌの高悪性度の乳腺癌において、間質に出現する筋線維芽細胞がテネイシン-cを産生することで癌の進展に寄与している可能性が示唆されました。一方で、良性の乳腺腫瘍における基底膜領域に発現するテネイシン-cは筋上皮細胞が産生していることが判明し、筋線維芽細胞が産生するテネイシン-cとは別の機能があるのではないかと考えられました。
また同様の検討をネコの乳腺癌でも行ったところ、イヌの乳腺癌と比べて間質における筋線維芽細胞の出現とその周囲における細胞外基質テネイシン-cの発現が明らかに多く、ネコの乳腺癌の悪性度の高さを反映する結果が得られました。
・Vet Pathol. 2011 48(1):313-21.
Increased presence of stromal myofibroblasts and tenascin-C with malignant progression in canine mammary tumors.
H. Yoshimura, M. Michishita, K. Ohkusu-Tsukada, K. Takahashi.
・Histol Histopathol. 2011 26(3):297-305.
Appearance and distribution of stromal myofibroblasts and tenascin-C in feline mammary tumors.
H. Yoshimura, M. Michishita, K. Ohkusu-Tsukada, K. Takahashi.
・Vet Pathol. 2015 52(1):92-6.
Cellular sources of tenascin-C in canine mammary carcinomas.
H. Yoshimura, M. Michishita, K. Ohkusu-Tsukada, Y. Matsuda, T. Ishiwata, Z. Naito, K. Takahashi.
経歴
9-
2022年10月 - 現在
-
2016年8月 - 現在
-
2016年8月 - 現在
-
2020年5月 - 2023年3月
-
2017年10月 - 2022年9月
学歴
3-
2008年4月 - 2012年3月
-
2007年4月 - 2008年3月
-
2001年4月 - 2007年3月
委員歴
7-
2023年12月 - 現在
-
2023年9月 - 現在
-
2022年4月 - 現在
-
2015年12月 - 現在
-
2022年3月 - 2022年7月
-
2019年4月 - 2022年3月
-
2014年10月 - 2015年7月
受賞
3-
2019年3月
-
2016年4月
-
2012年12月
論文
73-
International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife 101046-101046 2025年2月 査読有り最終著者
-
Journal of Veterinary Medical Science 87(2) 147-151 2025年 査読有り
-
Journal of Veterinary Diagnostic Investigation 35(6) 789-794 2023年10月2日 査読有り最終著者責任著者
-
Journal of Comparative Pathology 201 23-27 2023年1月 査読有り最終著者責任著者
MISC
69-
小動物腫瘍臨床 Joncol 35 90-102 2024年1月25日 招待有り筆頭著者責任著者
-
Wildlife Forum 27(1) 21-23 2022年8月 招待有り最終著者
書籍等出版物
3講演・口頭発表等
129主要な所属学協会
9共同研究・競争的資金等の研究課題
14-
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2022年4月 - 2026年3月
-
文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」 2024年4月 - 2025年3月
-
日本獣医生命科学大学 「特色ある研究プロジェクト2022」支援経費 2022年8月 - 2023年2月
-
自然保護助成基金 2021年度 第32期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 2021年4月 - 2022年3月
-
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 2018年4月 - 2022年3月
学術貢献活動
1-
企画立案・運営等日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学科 病態病理学研究分野 × 付属博物館 共催 2024年11月1日 - 2025年5月31日
メディア報道
1-
大学プレスセンター 2025年3月10日 その他日本獣医生命科学大学(東京都武蔵野市)獣医保健看護学科の吉村久志准教授らによる調査により新たに発見されたニホンオオカミの遺物(上顎吻端部を用いた根付)が、3月15日(土)~6月15日(日)まで国立科学博物館(東京都台東区)で開催される特別展で展示される予定。吉村准教授らは、兵庫県内の旧家に保管されていた当該遺物を形態学的および画像診断学的に解析し、その特徴を詳細に検討した。さらに、総合研究大学院大学(神奈川県三浦郡葉山町)の寺井洋平准教授がミトコンドリアDNAの解析を実施した結果、ニホンオオカミである可能性が極めて高いことが証明された。この遺物は、ニホンオオカミの遺伝学的研究を進める上で非常に貴重な事例であることから、このたび同展で公開に向けて準備が進められている。 吉村久志准教授は専門である腫瘍病理学や野生動物病理学の研究に従事する傍ら、江戸時代の馬医書の調査にも取り組んでいる。兵庫県内の旧藩の家老を務めた旧家に保管されていた馬医書を調査する過程で、同じく保管されていたイヌ科動物の上顎吻端部を用いた根付に着目した。この遺物がニホンオオカミのものである可能性を考えた吉村准教授らは、各部の計測を行うとともに、同大学 獣医放射線学研究室の藤原亜紀准教授がCT撮影を実施し、非破壊的に内部構造を観察した。 さらに、ニホンオオカミのゲノム解析を専門とする総合研究大学院大学 統合進化科学研究センターの寺井洋平准教授が、微量の骨粉からPCR法によりミトコンドリアDNAを増幅し、得られた遺伝子配列を既知のニホンオオカミの配列と照合した。 本遺物は、根付として加工するため、上顎吻端部が第2前臼歯の後方で切断されており、上顎骨と鼻骨の一部、および切歯骨のほぼ全体が残存している。現状の上顎骨長は57.9mm、上顎骨幅(犬歯位置)は41.6mmであった。右犬歯の歯冠高は26.3mmと、ニホンオオカミのものと考えて矛盾しない長さを示していた。骨の背側と切断面には黒漆、口腔側には赤漆が厚く塗られていた。また、犬歯と第1前臼歯の間の正中部には、紐穴が上顎骨から鼻骨を貫通する形で穿たれ、その紐の一端には黒漆塗りの円柱状木片が結びつけられていた。 またCT画像では、鼻腔内に正常なイヌ科動物であれば存在する鼻中隔や鼻甲介等の構造がみられず、加工時に内部構造をかき出したことが示唆されたほか、切歯根周囲の上顎骨に骨融解が認められなかったため、比較的若い個体である可能性が示された。 さらに、ミトコンドリアDNA解析では、得られた配列がニホンオオカミのものと完全に一致し、形態の測定値と併せてニホンオオカミである可能性が極めて高いことが証明された。 ニホンオオカミは20世紀初頭に絶滅したとされ、現存する剥製は国内にわずか4体のみである。一方、江戸時代から明治時代にかけて、ニホンオオカミの頭骨は病気治癒の呪具として使用され、顎骨を用いた根付は山仕事をする人々が魔除けとして身に着けていたと伝えられている。そのため、ニホンオオカミの頭骨やその一部とされる遺物は、日本各地の民家などに一定数保管されていると考えられ、形態学的にニホンオオカミと判断されたものも少なからず存在する。しかし、DNA解析によってその由来が証明された例は多くない。 今回の遺物は、根付に加工した際に骨が漆により保護されていたためか、DNAが非常に良好な状態で保存されていた。このため、ニホンオオカミの遺伝学的研究を進める上で非常に貴重な事例となる。 こうしたことから、このたび、同遺物が3月から国立科学博物館で開催される特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」において展示される予定である。 「新発見!ニホンオオカミの遺物-イヌ科動物の上顎吻端部を用いた根付けの解析-」 吉村 久志1、鈴木 遼太郎2、藤原 亜紀3、山本 昌美1、寺井 洋平4 第5回ニチジュウシンポジウム2024(2025年2月19日) 1 獣医保健看護学応用部門 病態病理学研究分野 2 同上 大学院博士課程 3 獣医放射線学研究室 4 総合研究大学院大学 統合進化科学研究センター ◆特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」概要 【会 期】 3月15日(土) ~ 6月15日(日) ※休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)、5月7日(水) 【開館時間】 9:00~17:00(入場は16:30まで) ※ただし毎週土曜日、4月27日(日) ~ 5月6日(火・休)は19:00まで延長(入場は18:30まで)。 ※常設展示は4月26日(土) ~ 5月6日(火・休)は18:00閉館(入場は17:30まで)。それ以外の期間、常設展示は17:00閉館(入場は16:30まで)。 【場 所】 国立科学博物館(東京都台東区上野公園7-20) 【入場料】 <一般・大学生> 前売券:2,000円 当日券:2,100円 <小・中・高校生> 前売券:500円 当日券:600円 【公式サイト】 https://ancientdna2025.jp/overview ▼本件に関する問い合わせ先 研究推進課 住所: 〒180-8602 東京都武蔵野市境南町1-7-1 TEL: 0422-31-4151 FAX: 0422-33-2094 E-mail: research@nvlu.ac.jp