鈴木 温之, 槇原 靖, 村松 大吾, 八木 康史
情報処理学会研究報告. CVIM, [コンピュータビジョンとイメージメディア] 2015(24) 1-7 2015年5月11日
防犯カメラ映像は,現代の犯罪捜査において,犯人の足取り追跡や犯人と被疑者の同一性の鑑定等,必要不可欠な存在となっている.歩容認証は他の生体認証と違い,カメラから遠方であっても利用可能という特長を持っていることから,そのような防犯カメラ映像に基づく犯罪捜査にとって極めて有用な技術となり得る.しかし,従来の歩容認証は主に一人の人物が孤立して歩行している映像のみを対象とし,実環境下で頻繁に見られるような複数人物が重なって歩行しているような映像に対して適用することは困難であった.そこで,本研究では実環境下の映像に対する歩容認証の実現に向けての第一歩として,実環境下の歩行映像データベースを構築した.本データベースでは,大阪大学吹田キャンパスにおいて,最大 140 人の被験者が,様々な歩行方法 (例えば,携帯電話を見ながら,荷物を持ちながら,友人と対話しながら等) で歩行する様子を,異なる場所,角度に取り付けた 6 台のネットワークカメラで撮影した.また,映像内の人物密度は歩行開始時の人物の流量を制御することで調整し,6 つのカメラはそれぞれ異なる場所,異なる角度から撮影した.結果として,実環境を模した様々な状況下での 31 シーンからなる,約 5 時間の歩行映像を収集した.本データベースを用いて,複数人物が映っているシーンに対する歩容認証のベースライン手法の初期性能評価を行い,考察を行った.