二宮 理佳, 川上 麻理
一橋大学国際教育センター紀要 3(3) 53-65 2012年7月 査読有り
本稿は、動機づけを高める方略として多読活動を捉え、情意面に焦点をあて考察した。JSL の学習者を対象に、2つの大学の中級レベルの授業で実践を行った。辞書を使わず読めるレベ ルの読み物を選ぶよう支援し、読解指導、テストでの評価は実施しなかった。日本語で本を読 み終えた、わかったという快の気持ちを体験させることを第一義の目標とした。実践の前後に 意識調査を実施し、授業内での観察、個別指導も含め分析した。その結果、多読の活動が内発 的に動機づけられた状態を生起させていたのではないかということが確認された。依って、授 業内多読をカリキュラムに組み込むことは動機づけにおいて有効に作用する可能性のあること が示唆された。